満足度★★★★
幕末の江戸,20年の歳月にうつろい絡み合う人の心,男と女の話。
劇『淫乱斎英泉』あうるすぽっと(A-18)2009年4月4日(土)12:30 幕末の江戸,20年の歳月にうつろい絡み合う人の心,男と女の話。
幕末の江戸、蘭学者・高野長英と絵師・英泉の出会い、女たちの愛、逃亡とその末路を描く。
独特の味がある先日「しとやかな獣」の浅野和之さん、古くは「ゴジラVSメガギラス」からチェックし出した田中美里さん、小劇場から帝国劇場のミュージカルまで近年多数の舞台に積極的に出演し続けている高橋由美子さんの出演で観ることにしました。
浅野和之さんの高野長英は、生真面目ながら追いつめられ、変わっていく。
田中美里さんは、若い純粋な時はその秘めた思いのしぐさがまさに可愛らしく、そして20年後には多くのことを背負って生きている。
山路和弘さん演じる英泉は、昔の淫乱斎英泉が絶頂の時には破天荒で破滅的な性格、高野長英と逃亡後には至って真面目に変わってしまうという変わった役。
そして妹との関係、この距離感も微妙で難しい。
この逃亡した3人は、その過程を描かずに一気に流れ流れて変わっていった結果が提示されますが、観客はすぐにその空白の間のドラマを各自が補完して観れています。
それとは打って変わって、高橋由美子さんの娼婦お半は一貫して明るく素朴。
クライマックスでは母性、すべてを包み込む優しさを発揮して、終始、登場人物の中でも最も気持ちがまっすぐで素直。
高橋さんのこれまでのイメージにも近くて最も得意な役どころではなかったでしょうか。
木下政治さんは商人越後屋。こちらは同じく一貫しているのは何か常にはかりごとを考えている人物。
というように、江戸にいた人間は変わらない。
20年かけた、ほろ苦い、味わい深い男女の物語でした。