満足度★★★★
ビル5階の狭小空間SCOOLで役者9名のモノローグとくっ喋りとムーブやゲームを見た。向い合せに高低2タイプのパイプ椅子が間隔を置いて2列並び、空いた側の壁には一列椅子が並ぶが後者が実は俳優がずらり座っている。一人がおもむろに口を開くと開演。ちょうどキャンプファイアで自分の事を語り合うようなモードで、他者の話を「きく」行為・態度についての検証材料が展開する。この「告白」モードでの語りには、人のプライバシーを覗くちょっとしたわくわく感があり、それへのリアクション、薀蓄や話題の転換などネタ的には面白く見られるが、作り手が選択した仮説へと収斂して行くものがなく、云わば検証材料陳列になっている。
これらがまるで即興のような臨場感で表現されるのは興味深い。パンフに書かれているとおり製作過程で俳優個々が持ち込んだ素材が活用されているのだろう、俳優らは彼ら自身として存在し、与えられた役を演じているようには見えない。台詞の流れは最終的には即興でなく決定稿となったと思われるが、「作りこまれた」ように見えないのは作品というよりワークインプログレスの発表に近い。作り手は作品として提示したに違いないが内容はそういうものに思えた。
俳優が演じやすい俳優個人としてありながら、つまり出し物としての作為性が比較的薄いものでありながら、狭小空間の利点と考えてか客に介入する(舞台をはみ出る)部分が時折ある。しかしこれが不遜な印象を与えなくもない。作為的に堅固に作られたものの上で「遊ぶ」のは(戻るべき場所があるので)有りだが、あやふやな土台の上で客に介入すると自信の無さの裏返し(本人的には積極的介入?)にみえてしまう。
出し物として面白い場面、秀逸な局面は多々あったが、作品にまとめ切れなかった印象が残る。