満足度★★★★★
舞踊公演というものを初めて観たのが恐らく10年位前、勅使川原三郎で「○○凱旋」なる文句に弱い素人丸出しで興味本位で観劇した。普通に海外でやってる人だから今思えば凱旋じたい特別でもなかったが、とにかくその公演ではまことによく寝た。明度が絶妙に睡眠に誘うのは今も変わらない。
数年前の「青い目の男」に続いてブルーノ・シュルツの文学作品が題材だというので、あの感動をもう一度と出掛けた。この人の才能は踊る肉体もさる事ながら照明、音響(選曲・コラージュ)と一体化した世界にあり、今作は一きわ斬新な照明効果、そして音との不思議な絡みによって、言葉に触発された世界が今生まれたかのように浮かんでいた。静と動、明と暗が一瞬にして変化し(この一瞬と緩慢との間のグラデーションがまた自在)、後を引かない。踊り=演技?は高潔・純粋で、艶かしい。勅使川原は小刻みに震えたり吃音的動作という変則的動き、佐藤利穂子はこれまで見て来た記憶と合わせ、彼女独自の言語を持っている事を発見。「動いていること」が生命レベル(否物質レベル)では常態である事の示唆を私はどこか受け止めていて、彼らが激しく動いていても「している」でなく「ある」が見えてくる感覚を味わう。実際はかなりの運動量なのだろうけれど。