注意書きの多い料理店 公演情報 TOMOIKEプロデュース「注意書きの多い料理店」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人や店のビジョン、コンセプトを底流に描いた喜劇は楽しめた。描きたい内容は何となくわかるが、演出が喜劇としての祝祭性というよりは騒々しいという印象をもったのが残念だ。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    舞台は「レストラン風野」の店内…上手にカウンター、中央や下手奥の一段高くなったところにテーブル席。下手壁には切子細工が施されたガラス窓があり洒落ている。中央が出入口であり、外には蔦が絡まるような風景が見える。そしてカウンター傍にこの店の看板料理”高級ツナチーズハンバーグ”のメニューが掲げられている。

    梗概…看板料理に虫が混入していたとクレームが、その対応のまずさからネットに誹謗中傷が書かれ店は閉店。その後、大手チェーンの傘下店として再びレストランを開業しよう…という始まり。その開店準備に忙しい時に幽霊騒動が起きる。幽霊が見える人、そうでない人がいるが、そこには緩い理由付けがある。その理由がこの公演の根幹を示す。
    登場人物が一通り紹介されたところから、除霊、店長とバイトとの浮気、クレーマーと揉めて店を辞めた男との確執、店長の妻(この店の親企業・大手チェーン店の部長)の高慢さ等の挿話を絡めた騒動が起きる。誤解や勘違い、そしてエゴや自尊心など人の渦巻く感情をワンシーンへ放り込む。その観せ方は喜劇の賑やかさというよりは単に騒々しいだけといった印象だ。それを収束させたのが幽霊の想いという現実味(説得力)のない方法で、あまりに安易で残念だ。

    冒頭のクレーム対応に観る、店(長)としての毅然とした姿勢のなさ、幽霊になった女の夢、見ているだけで元気になれるような女優を目指すといったあり触れた気持ち。両人に共通しているのは、確固たるビジョンとコンセプトを持ち合わせていないこと。くり返し出てくる「コンセプト」という台詞、そこに込められた信念のようなものがあれば、いろいろなことに振り回されることはない。そして誰もが望む、誰かの役に立っているという確認。幽霊女の曖昧な女優志望動機、幽霊が見えるレストラン店員のバンド活動の中途半端さ。そこにはまだ何者でもない人の不安定さ哀感を観ることができる。
    物語は人の弱みを見せ、そこからスタートまたは再出発するような力強さ。何らかのかたちで人の役に立ったという自己肯定感を得て成仏するハッピーエンド?はしっかり楽しめた。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/04/21 23:40

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