検事と犯人のフィクション術 公演情報 東京パイクリート「検事と犯人のフィクション術」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    この公演の魅力は場面転換をスピーディに行い、物語をテンポ良く観せる。そして壁に飾ってある額縁内にピストブラムのような絵文字・記号があり、それが物語の場所や情景を暗示している。その額縁の変化(場所の移動や有・無)によってシーンのセットが変わるという関連付けが巧み。
    基本的にコメディであるからテンポは重要で、この良さによって観客の集中力を引き付ける。もちろん物語の内容も面白い。
    (上演時間2時間) 2019.4.28追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に出入口、左右の壁に小さな飾り額縁が掛けられ、その中にピストグラムのような絵記号。例えばタクシーの絵や検察官の徽章などである。冒頭、中央には変形の箱馬が積み重ねられている。場面転換ごとにそれを移動し、タクシーの中、スナックや接見室を作り出す。またこの会場の出入口の上部に別スペースを作り、場所や時間という空間の広がりを作り出す。全体的に状況設定の演出が巧みで、その結果良いテンポを生み、芝居を心地よく観せる。

    梗概…実演販売員・猪戸 佐平次は、流れ者であるが出会う人間とすぐ仲良くなり北国・四色郡に居着いてしまった。ある日、佐平次は「銃刀法違反」で警察に捕らわれる。彼の部屋から拳銃が見つかったが、まったく身に覚えがない。四色郡で親しくなった人たちが佐平次の無実を証明しようと奮闘する?他方、佐平次を担当することになった検事・小田桐 啓も不自然に逮捕された佐平次を救おうか救うまいか、良識と組織の板挟みに遭って...という展開である。

    公演の魅力は、何といっても登場人物のユニークなキャラクターとテンポの良さが観る人を飽きさせないところ。情景や状況は箱馬のようなセットの移動等で分かり易いし、人物造形は身近にいる人をデフォルメして、あぁそんな人いるなと納得させる。物語は謎の解明に近づいたり足踏みしたりするが、徐々に事件の核心に迫る。しかし逮捕された佐平次は拘置所内にいるから、その進捗がもどかしく接見時における説明と哀願に終始する。その心情は泣くではなく何故か笑ってしまう、という喜劇の醍醐味を感じる。何故か佐平次が外部の人と繋がっているように思える。それはピストグラムのような絵記号が場面構成の手助けを行い、今の場所と次の場所をしっかり繋ぎ、そこに居るのが当たり前という雰囲気を作るという見事な演出である。

    警察内の悪事と隠蔽、それを検察上層部も見て見ぬふり、それどころか庇おうとするような動きをする。権力側と小市民といった対立構図、圧倒的に不利な状況下で何とか事件解明に尽くす人々、その荒唐無稽とも思えるような姿や行動に清々しさを覚える。また検察内部における良識派検事も覚醒していく過程が痛快である。弱気を助け強気を挫く、という物凄く分かり易い物語であるが、十分楽しめた。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/04/14 02:12

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