まほろば 公演情報 梅田芸術劇場「まほろば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    芝居を見たあと、豊かな気分で家路をたどれるいい舞台だ。
    まず、脚本がいい。いくつか賞を受けた再演で、こういういい芝居が、俳優・演出の趣向を変えて何度も見られるのは演劇の円熟を示すことにもなる。再演は何も商業演劇の経営保持のための特権ではない。
    ストーリーは、田舎の実家のまつりで戻ってきた一家4代の女だけ6人の話だ。よくある帰郷もの、の世界だが、焦点が女たちが子供を産むと言う事に絞ってあって、二転三転面白く見せられてしまう。最後に物語が、タイトルの『まほろば』、(豊穣の国)の大きなテーマにつながっていくところ、ここ10年の現代劇の代表作の一つと言われるだけのことはある。
    蓬莱竜太にとっても代表作だろう。世代をつなぐという視点から、現代世相の中の女を書いた。舞台は、元地主の家の2間つづきの部屋、一杯。祭りの日の朝から夜まで。
    チョコテーとケーキの演出・日澤雄介の手際がいい。台詞だけでなく、舞台の俳優の動きにリズム感がある。突然、4景の終わり、長女がトイレに行っている長い、ほとんど台詞も動きもない時間を、そこまでの各登場人物の相克を詰め込んだクライマックスにしてしまうところ等、お見事。次は劇団代表作「治天の君」を装いを変えて再再演すると言う。楽しみだ。
    三田和代がすっかり老け役になっていて、高橋恵子が、一家を切り回す主婦役。ベテランのうまさだが、新派風にならず、現代になっている。問題は長女の早霧せいなと次女の中村ゆり。二人とも十分旨いのだが、今後現代劇でも大いに期待されている早霧せいなは、役の解釈が時に宝塚風に単調になる。少し、酔うと何もかも忘れてしまうという設定にとらわれ過ぎた。ここは雛まれの都会女の方が彼女のガラを生かせたと思う。逆に中村ゆりは田舎の雰囲気が薄く、ズルズルと田舎で自堕落に生きているたくましさが弱い。むしろ都会的でさえある。娘の衣装の値段に気付くところの姉妹の反応のシーンで、二人のあり方が鮮明になるところなのに、生かされていない。生越千春はガラが生きた。
    しかし、総じていえば、梅田芸術劇場の仕込みとしては大ヒットである。
    客席は、ほとんど中央の席は、早霧せいなの宝塚時代のファンクラブらしいアラ・サーティ・フォーティの婦人客で埋まっていた。満席は何よりだが、この芝居の面白さを下世話の興味だけでなく見てくれているといいのだが。

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    2019/04/12 00:05

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