満足度★★★★★
一言では言いがたい、重くて凄みのある芝居だった。笑えるところもあり、特に鈴木杏が演じた次女のあっけらかんとしたキャラクターは、救いでもある。自分本位で自堕落で、褒められるところの一つもない母。男に頼るしか生きる道はなく、思いを満たすためには娘をも足蹴にする。その母を否定しながら、母の呪縛から逃れられない娘たち。それぞれが心の奥底に沈殿した思いをぶちまけ、ようやく3人は母の呪縛から解き放たれる。田畑智子がしっかり者のようでいて、抜けたところのある長女を好演。三助役の芳根京子も屈折した思いを丁寧に表現していた。なんといっても凄みがあったのは、母を演じたキムラ緑子だ。立ち姿一つで、やさぐれた中年女性を表現している。先がない切迫感が、滑稽でもの悲しい。若さへの妬み。飛びたくても飛べないジレンマ。蓬莱竜太の脚本は、人間の心の奥底を覗き込むようで、ちょっと怖くもある。