満足度★★★★
「オリザ演劇展」の感想ラスト「忠臣蔵OL編」。AそしてBを観た。Aは天明瑠璃子のご家老(大石内蔵助)がすっとぼけてても何か知らん説得力で最終的に集団を方向付けていくリーダーシップ、最後に「これって運命でしょ」の決め台詞で一同納得。Bは、Qの破壊的演技しか知らない永山由里恵と、笑ってる芝居しか知らない川隅奈保子を見たく観劇。永山は割とマトモだった。ご家老役森内女史はカリスマというより販売系叩き上げ支店長、責務を果たす中間管理職のトーンで存在し、それにバランスするのが取り巻く面々、横の影響のし合いが作った空気感が良かった。要は個々の存在の信憑性に関係するもの。江戸中期の赤穂藩の状況にOLのテイで対峙する荒業が通るミラクルは、同作品を見慣れたせいだけでもなさそう。
ただ袴姿の男がやる「武士編」に比べ、伝えたい何か(平田氏は「伝えたいものなどない、表現したいものは山ほどある」と言うが)の明確さが問われる。戯曲の「無理」を通せた優れた布陣(運が良かった回)ならともかく、そうそうリアルで濃密な芝居にはならない以上、伝えたいものを受け取るという観客とのコミュニケーションが舞台の価値を担保する事実は否めない。そこを抜かすと、舞台は役者力を評定する場という意味に寄ってしまう。複数チームの上演なら、役者力の競技の場というゲーム性を持つが、意味合いは同じだ。青年団、平田オリザ戯曲に限ったことではないが。
しかし層の厚い青年団ならではの祭典、今後も続けられたし。