満足度★★★★
鑑賞日2019/03/11 (月)
下北沢シアター711にて おおのの♪『ザ・漱石 再演ニ非ズ』を観劇。
文豪・夏目漱石の生き様を、漱石の妻・鏡子へのインタビューシーンなどを交えながら紐解いていくような作品。一見するとお堅く難しそうな印象を受けるテーマではあるものの、漱石と鏡子の波乱万丈の生活ぶりをユーモアを交えて面白可笑しく描いており、全く堅苦しい雰囲気は感じられず、むしろ楽しみながら漱石や彼に関わった色々な人達、彼の残した小説などについて触れることが出来たような気がします。おおのの♪さんの作品観劇は2016年の『さよなら、先生』以来3年ぶり2回目。前回は太宰治の作品をモチーフとした作品で、今回同様になかなかユニークな視点から描いていた印象がありますが、扱う人物こそ違えど“文豪”という部分にスポットを当てて作品を創られている“一貫性”のようなものが感じられる点は良いと思いますし、文豪達の人格や生き様などに対して新たな発見もあって、今まで以上に奥深く作品に触れることが出来る点も魅力だと感じます。2回しか拝見したことのないカンパニーですが、今回の公演を以てピリオドを打たれるということで少し残念な気持ちも抱いています。どんなに立派な小説を書き、後世に語り継がれるような大きな功績を残した文豪であっても一人の人間であることには変わりなく、当然その文豪が一人だけいても成り立たない。人間は色々な人達の支えがあって生きられるものだと再認識したような気がします。夏目夫妻も波乱万丈の人生ではあっても、まぁ幸せで素敵な生き方をされたのではないかと思いました。
舞台セットは何もなく小道具もほとんど無し。演者さんの演技もラフで自由な雰囲気が感じられ、お芝居全体の完成度の高さという部分はやや欠けるような印象を受けたものの、見せ所はしっかりとしており良かったと思います。夏目夫妻役の大井靖彦さん、川西佑香さんは勿論、キャラがまるで異なる複数の役を演じられた藤澤志帆さんらの好演も光っていたと感じます。丸川敬之さんのチャラ男ぶりやコミカルな動きも面白かったです。