満足度★★★★
鑑賞日2019/02/06 (水) 14:00
座席1階2列8番
サトウハチローの母親への思慕を見事に描いた音楽劇。
主演の土井裕子さんや、阿部裕さんの歌唱が見事なのは言うに及ばず、他の役者さんたちもかなりなハイクオリティで歌唱をこなしていて、新劇の役者さんも大変なんだなあ、と感心した次第。
チケットもほぼ完売のようで、こうした舞台に多くの人が触れるのはよいことだと思います。
知っている歌謡はもちろん、新垣さんがメドレーをつけた多くの詩も、曲そのものの良さはもちろん場面構成の上で素晴らしかった。
ただ、異母妹の佐藤愛子が指摘しているように、多くの母を謳った詩があくまでハチローの創作の範囲内である、という指摘は払拭しきれない物足りなさもあった。
ハチローの母への思慕の源泉が今一つ理解できなかったのだ。
母親春は、お嬢様育ちで、父親に翻弄された、ある意味弱く不幸な女だった。
それへの憐憫があったのかもしれないし、他の兄弟に注がれた愛情が自分には注がれなかったという嫉妬もあったかもしれない。
舞台では、後半かなりハチローと母親との関係が濃密に描かれているのだけれど、前半でその根幹となる心情の発露が十分に描かれているとは言い難い。
でも、ただただ何度も目頭を押さえなければならないのは確かで、親子の原風景を歌謡と共に見せつけられる2時間半は、よいものを観たなあ、と感心させられるばかり。