お彼岸の魚 公演情報 ニットキャップシアター「お彼岸の魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    しっとりしてると思ったら・・・(笑)
     母の失踪と十数年ぶりの帰郷という設定で、記憶の曖昧さから自己存在の危うさへとつながっていく物語でした。幕開けから団地のリビングでの静かめな会話劇が続きますが、終盤にダイナミックな質的転換があり、ごまのはえさんの独特の劇世界を体感できたように思いました。とても面白かったです。でも、役者さんの演技のわざとらしさ、空間の詰めの甘さなど、作品全体の完成度の面で少々もったいない感じの仕上がりだったように思います。

    ネタバレBOX

     主人公・美智子の記憶を自分の記憶のように話す人が現れたり、美智子は小学校6年生の時から母親と二人暮しなのに、父親のことを全く覚えていなかったり、美智子と彼女を取り巻く人々が曖昧な記憶を軸に空回りしていきます。
     部屋の窓にへばりつくように鎮座する大仏様は、「あなたが嘘をつくことも、記憶に蓋をすることも、そこに居ることも(居ないことも)、すべて見ていますよ」という意味だったのかなと思います。
     美智子の右目の眼球が歪んでいることは、見えているようで実は見えていない(見ていない)状態を表し、カーテンを片方だけを閉じて大仏様の顔の右半分が隠れるようにしたのは、心憎い演出でした。


     失踪した母親からの電話を待つことで、美智子は失っていた自分を取り戻していきます。突然“知らない人”がいっぱい登場してコントのような展開になり、美智子がマイクを持ってソロで歌うとこまでイっちゃうとは・・・全く予想がつきませんでした(笑)。ド派手で奇想天外な展開は素晴らしいと思いますが、そのドタバタがただのドタバタで終わらずに、知的興奮にまで達してくれたらなお良かったと思います。
     「知らない人と付き合っていかないと現代社会では生きていけない」というセリフ(正確ではありません)がギャグのように語られたことに、すごく好感が持てました。


     美智子とご本人様(朗読者)がすれ違っていくラストの演出が良かったです。対象物が白黒に見える黄色い照明が、美智子および部屋全体を包んだのは効果的でした。私は美智子が堕胎した子供が最後の最後に出てきたのかなと想像しました(実際はそんな意味はなかったそうです)。マイクで美智子の気持ちを朗読されていた朝平陽子さんの声が良かったです。


     美術については、ふすまやドアがおおげさに斜めになっていたり、窓の外に至近距離で巨大な大仏の顔があったり、不思議な仕込みがあるのはとても面白かったです。でももっと細かいところまでこだわって丁寧に作って欲しかったですね。例えば、小さな部屋にダイニングテーブルとイスのセットが2組も並んでいるのはおかしいと思いました。

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    2007/04/01 23:14

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