満足度★★★★
照明その他、技巧を排した淡白な演出、技巧はテキストで勝負というナベ源。手がかりが台詞という舞台は体調次第で睡魔に屈するが今回もそうなった。戯曲を買って読み直し、舞台風景と重ね合わせ、ある種の感動に導かれた。工藤千夏と畑澤聖悟のリレー執筆(相手が書いたのをいじるのも有り)で結実した作品だという。ユニークな戯曲で、ブラッシュアップというよりもっと膨らませられそうな素材だ(SFだけに厳密な設定が必要かも知れないが..)。
ロボットや核動力といったアイテムは珍しくないが物語は独自。主人公である「母」(ロボット=人間と同じく子供らに愛情を注ぐ。それを使命としてプログラムされている)が、同型機種が動力エネルギー(ブルーコア)の事故を起こした事でシェアハウスという名の隔離施設に収容されている。そこは快適で家庭での思い出に浸りながら母は平穏な生活を送っているが、ある時、実在する(人間の)息子らが訪ねてくる。兄弟は少年の頃の夢(芸術家)とはかけ離れた道へ進み、兄は他国へ派兵する自衛軍に入隊、弟はテログループに所属する。地下数百メートルの施設では知りえない現実の情勢が、自らの陣営に母を引き込む行動へ兄弟それぞれを突き動かしたという事だが、少年時代の再現風景ともあいまって、彼らの「母親」への愛情(マザコン性)を窺わせもしてほろ苦い。銃を向け合う兄弟に対し母親はかつてのように「やめなさい!」と厳しく叱り、自分の使命を繰り返す。「あなたたちが健康を保ち、仲良く暮らしていくこと」。・・感動巨編に膨らみそうなプロットが示されていると思うのだがどうか。