満足度★★★★
チェーホフの処女戯曲、死後20年経って発見された作品ということなのだけれど、けしてまとまりはよくないし、話も何を書きたいのかよく判らない(ナレ死する登場人物もいたしね)。結末は、ちょっとあっけなさ過ぎて(まさか、そんな終わりはないよね、と思ったらその通り)拍子抜けしてしまうくらい。でも、面白い。
本来は5時間に及ぶ長さのようなのだけれど、それを休憩挟んで3時間にまとめ、藤原竜也に自由に演じさせていることが判ると話は、恐ろしいくらいの疾走感で進み、所々の話の淀みや辻褄のなさは一向に気にならなくなる。
それに、ちょっとでもチェーホフについて知っている人ならば、この話のところどころで「桜の園」「かもめ」「ワーニャ伯父さん」など、その後の彼の作品の萌芽が垣間見られ、ふと頬が緩んでしまうという楽しみもある。
また、役者さん各位が芸達者で、ただ舞台だけ観ていては、この役は○○だったんだ、という驚きもある。特に、高岡早紀さんや神保悟志さん、小林正寛さんなどは、言われなければ気付かないくらいに、役との同化度が高く、まさに劇中からそのまま取り出したよう。
次回の森さんのチェーホフ作品にも期待大だけれど、できれば、公共劇場でもう少しリーズナブルだと助かるなあ。