満足度★★★★
鑑賞日2019/01/25 (金) 19:00
古典悲劇の名作を、東京アートミュージアムというちょっとした異空間で上演。
ピアノと1脚の椅子を除くと何もない殺風景な舞台だが、和の着物を使ったり、ファッションにも配慮した展開は、むしろシンプルイズベスト。皆さん、ピアノがお引きになれるとは、器用な方が多いのですね。
2時間ちょうどの舞台は、時おりユーモアも含みながら、破綻なく怒涛のように進み、パンフに引用されていたハンナ・ミュラーの言葉通り、力を与えてくれる悲劇でした。
ただ1つ残念だったのが、アテナイ王テゼーを演じた荒牧大道さん。後半登場するとただただ単調に大声を張り上げるだけで、王としての威厳、抑制することで漏れてくる苛立ちや怒り、周囲へまき散らす猜疑心、なんてものが全くなく、ただのガンコ親父にしか見えない。
荒牧さんは何度か、舞台で拝見しているのだけれど、それに気づいたのは終演後の挨拶の時。そう、あの素の整った低い声を聞いた時でした。なんだ、その声でさらっと演じてくれた方がどれほどよかったか。