INDEPENDENT:18 公演情報 INDEPENDENT「INDEPENDENT:18」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/11/25 (日)

    今年も充実の時間でした。好みでいうと、「穴」が最推し、次点が「仕事の流儀」 、その後は「引くな、引くなよ」、「貝独楽行進曲」、「母とおかあさん」、「薔薇の手紙」… と続いていく感じかな。勿論、それ以外も芝居のレベルの高さは存分に楽しませて貰いました。

    一部の作品の感想をネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    【続き】

    [e] 穴

    くたびれたおっさんの回想が紡ぐ…無駄にエネルギッシュな青春の発露が面白おかしく語られる。
    懐かしい… でも甘酸っぱい高校時代の破天荒な大土木事業…それだけでも面白味が深いトンデモ事変ですが、その続きの「今」が…また神秘的ですらあって、全地球規模を感じさせる拡がりになっていく… SF感すら漂うのが、… おっさんには堪らなく響くのだ。

    「穴」と呼ばれた彼は…いったい何者だったのか、もしかしたら…故郷を求める地底人ではないのか?、そんな妄想まで掻き立ててくれた。…そして、不意に現実に引き戻すギャップのあるオチの見事さよ。しかも全ての妄想を否定しない粋な計らい。


    [f] 仕事の流儀

    遂にINDEPENDENTに創作落語が登場。落語風味にDネタということで、名古屋の人は稲垣僚祐さんの「夢と魔法の国」を思い浮かべたかもしれない。もちろん切り口は異なるが… 後味は同じ心地良さを感じさせてくれる。現代的な職種に組み合わせた「古風な職人気質」とのギャップの面白み、強面の父が娘には弱いという定番のアンバランスは観ていて微笑ましい。
    一方でタイトル通りのパロディを使ってこなかったのは意外でしたが、大人の事情でしょうか、それとも囮だったのか。そして、ある意味予定調和だが、スパッと切れ味の良い落語ならではのオチ。これは察することが出来たとしても思わずニンマリだ。

    そして最後の最後に仕込まれたINDEPENDENT出品作品に相応しい舞台の仕掛け、思わず歓声が漏れる。どこまでも心憎い幕切れでした。


    [d] 引くな、引くなよ

    冒頭は…状況がまったく読めない… 最初は「補導員」が「万引きした少年」を尋問している?… って想像を思い浮かべながら観始めましたが、やはりそこは安易な想像の枠にはハマらない。

    前半の会話自体は…まったく他愛もなく 微笑ましくすらあったのですが… 徐々に透けて見えてくる背景、色濃くなっていく犯罪行為の疑い。微笑ましかった筈の空間が… 一皮剥くごとにシリアスの度を深め、彼女の一人ボケツッコミが可笑しげに響くほどに、更にその影に潜む彼女の心の傷が浮き彫りになっていく。どうしようもなく傷ついているのに、ふざけ半分に癒しを求めて、もっと傷つく。本来なら歓迎すべからざる訪問者に…オ~イと手を振って応える姿が、人にとって何が一番辛いのかを感じさせて、泣き笑いするしかない。


    [j] 貝独楽行進曲

    ほぼ全編で絶え間なく続く緊迫感は全作中随一。そして ひたすら深い相愛に包まれる男女の…決定的なところで噛み合わない今生の別れの証言。冒頭の男の言葉が観客の脳裏にずっと影を差しながら、女のあまりにも切ない嘆きと…男への思慕を見続ける展開。非の打ち所がないその愛の言葉の連なりに…1つだけあった何となく違和感のあった…ある生理現象を指す言葉が…やはり最後の最後であり得ない勘違いを生む元となっていたことが分かる。

    正直、お互いの愛の言葉が輝けば輝くほど、その誤解の落差は凄まじく… これが舞台でなくTVだったら、「マジか~」と声に出してしまったに違いない。

    傍から見れば…すれ違いとか勘違いとかで済む次元には思えないものの、一瞬のアイコンタクトの難しさ…と呑み込むべきなのだろうか。…ただ、往々にして、人は対象物から望むモノを読み取ろうとするという。男が女に感じていた深層心理、男に根差す自己否定感… とか背景の妄想も湧く。

    それにしても…不謹慎極まりない発言になるが…、悲劇って美しい…と思わせる凄みのある舞台だった。


    [a] 母とおかあさん

    1人芝居の「ルール」から自分で作り出してしまう高い独創性。役の切り替わり… 普通の1人芝居なら切り替わる空気を察する感触を味にするところを、ゲーム性の高いルールに仕立てて意外性を楽しませる。そして…自分で作っておいて…それをヒョイッと飛び越える柔軟性が痛快。

    そして笑い優先のお話かと思いきや、イマジナリー・フレンドならぬイマジナリー・マザーを患う病んだ背景描写や、他愛もない出来事をドラマチックな最後に繋げるさり気ない仕掛けが、劇作としても貪欲でした。…見た目に反して(?)、中身ギッシリ。

    さて最後に私は謝らねばなりませぬ…
    日曜にクシャミしたの私です<(_ _)>

    まさか…まさか…それを咄嗟に…しかもあんなに絶妙に拾うなんて正直驚きを隠せないし、やらかした私もまさしく救(掬?)って貰えた気分です。…そして他の観客の皆さんは「川久保伝説を目の当たりに出来てラッキーだった」ということでご容赦ください<(_ _)>

    それにしても臨機応変さが凄いね。途中で「お姉ちゃんの紙」が2枚飛んだのが気になっていたら、案の定、最後に紙が無くなって一瞬止まる間。…これが本当にトラブルだったかは分からないけど、むしろ思わせぶりに過ぎる時間が別の解釈を想像させて面白かった。
    即興劇もこなしそうなお人。作品というより、この方を観に来るコトそのものが娯楽になりそうな逸材でした。

    0

    2019/01/03 19:31

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大