夢見るリリィと華麗なる生活 公演情報 妄烈キネマレコード「夢見るリリィと華麗なる生活」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/07/07 (土)

    シェアハウスでの人間関係。一つ屋根の下で繰り広げられる…親密なそれは、家族ほど無遠慮でもなく、ほどよい距離感と気遣いの溢れる空間。

    つい最近、劇団アルデンテ「みえているせかい」でも感じた…漫画なら愛すべき定番のオーソドックスなシチュエーションなのだが、リリーハウスの物語では…「愛おしいほどの日常の空気」を作ることに、より精力が注がれていると思えた。

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    ほとんど素じゃねぇ~か…と思える演技、どめどなく続く雑談、さりげなく入る飲食のシーン、それらが生み出す生活の自然さ。自然な親密さの空気を形作り…積み重ねることが…最も重要視された演出だったのではと思う。

    じっくり形成されるこの「空気」があったればこそ、最後に集約される「それを失うこと」の当事者にとっての重大さ、未練の大きさがリアリティを持つ。そして…そこから一歩踏み出すことの苦悩と…次のステップに適応しようとする決意に…ドラマとしての深みを添える。

    想いが深い故に… 何か理由をつけて… 自分が犠牲になってでもソレを残そうと思ってしまう人に、「犠牲がある時点で… それがココにある意義は失われている」のだと…諭すかの様な結末でした。
    この逡巡は、リリーハウスのみならず、「1年続けた連載」「自責の念から遠ざけた家族」「日本での就職の志」「ここまでリリーの力になれた手段」…等々で個々のドラマからも積み上げられて、同じ視点で群像劇としても束ねられていましたね。

    言い方を変えれば、「引き際の難しさ」でもあって、期を逃すと歪みや悲劇しか生まないのだが… 本作では何度も繰り返す… 「思い出は無くならない」と。今 大事なものが そこから無くなることは、それを否定することでも…無にすることでもない。役目を終えたモノ・コトに…感謝の想いを捧げつつ、次の一歩を踏み出す。まるで儀式の様に象徴化された「マチ子の漫画」は…現実ならなかなか形にし難い想いを素敵な実体にして…良い幕引きだったなぁとしみじみ思います。

    (ぶっちゃけ、売っている台本を「マチ子の漫画」にソラ見して、かなりドキドキした。そして、台本のラストに書かれた… 『物語は「おわり」、人生は「つづく」』の一言もむっちゃええ。)

    好きなトコとか諸々。

    ・舞台美術の凄さは言うまでもない。
    ・波音、子供達、蛙の鳴き声の微かな環境音
    ・冒頭からそれと分る常滑メロディ
    ・裕次郎とマチ子の告白(?)シーンの盛り上がりと…そこから一転、抜け目なくドア裏に貼りついてオチを作った3人
    ・オヤジへの手紙を…フェイントで読み始めた田村麻呂の不器用な愛情
    ・帰国間際、お土産をネタに罵詈雑言を交わす春麗と田村麻呂
    ・終始いぢられ続ける裕次郎… というか森さん(笑)
    ・若い座組の中で全く浮かず…でも存在感を放つくらっしゅさん、凄い。
    ・過去役とはイメージまったく異なったアンジェさんの春麗。どこで百烈脚が出てくるかドキドキしてました(笑)
    ・まったくブレないリリーさんのダジャレ
    ・ぶっちゃけ、工場長が救われる展開は無いと思ってて、意表を突かれた。ある意味、彼だけが初志貫徹!

    考察追記。→ ゲンはリリーハウスの大勢とは逆に近々で新たな一歩を踏み出した人、田村麻呂はそういうのに慣れている人。彼らの行動の裏にはその経験が活きていて、渉外支援に何かしら彼らが絡んでいるのは納得。ゲンはもう少し表立ってもいい気はするし、全体としてこの図式をハッキリさせても良いのだろうが、そうしないところが本作の味かな。頑張りすぎると前進を急き立てる圧迫感が出るし、ゆっくり自分のペースでいいんじゃないか…というメッセージであるのかも。工場長の描写にその色が顕著。

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    2019/01/03 13:23

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