精神病院つばき荘 公演情報 つばき荘上演委員会「精神病院つばき荘」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    冒頭から耳に覚えのある台詞と展開・・。別役戯曲をパロったオープニング?いやいや長い。どこかで読んだか観ている。一体何処で?、、気になりながら前半を観劇し、後半で漸く思い出した。
    昨年末の劇作家協会新人戯曲賞の公開審査で、候補作を一本20分か30分読んでいくというプレイベントがあり、どうやらそれを聴いたらしい。もっとも、「あ」と思い出したのは実際には聞かなかった終盤の部分、殆ど一場物の芝居の最後だけ、暗転の後かなり(物語上の)時間が経って人物の様子もガラッと変っている。公開審査での審査員が交わす意見を聴きながら、頭に形作っていた場面が出現した訳だった。それもその場面に対するややネガティブな印象(審査員による)とセットで。
    くるみざわしんによる戯曲の評価は「原発事故被害の問題に果敢に挑んだ意欲作」「言及のさせ方が巧い・・とぼけた病院長の暴言と患者のやり取りとか」と好評で最終決戦の候補という感じだったが、「(終盤での)院長の変化に飛躍がある、その過程が欲しい」「大作と言える枚数、もっと圧縮できないか」といった減点評価あり。そう言えば最後までこの作品を推したのが渡辺えりだった。
    それはともかく...
    確かに長い戯曲で、これを1時間50分に圧縮したのは恐らく土屋良太演じる院長の高速台詞術による。最後の場面が全体の5分の1、残りのケツ4分の1が「注射の下手なベテラン看護婦」(近藤結宥花)が登場しての院長告発場面、その残りは、口数の少ない患者(川口龍)に殆ど喋らせず説得しまくる院長の独壇場なのである。噛みはあるものの俗物で飄々とした病院長の風情で台詞を連射する土屋氏の役者力は嫌という程見せつけられる。一方、昨年十数年振りに舞台でみた近藤氏の今回の白衣姿は(新宿梁山泊で主役を張っていた頃の少年然とした姿を彷彿させたが)、「注射が下手」と患者から嫌がられるという戯曲上の「いじり」を受け切れてなく、純粋一直線。原発というテーマが流れる戯曲で、観客が共感できる「真っ当な感覚」を体現する人物を買って出た(あるいは演出)ように思われた。そして、病院で一番頭脳もはっきりしていて入院歴の長い男性患者は院長以上に他の患者の事を理解し、うまく対処するので信望も厚い(この皮肉な設定ももっと発展させたい)、だからもし事故が起きたら「病院から逃げない」と一言発言してほしい、というのが病院経営側の希望であり、説得の使命を帯びたのが院長なんである。
    原発事故を遠回しに言及させる設定のうまさがこの戯曲の売りであり、そのための些か突飛な設定での長編コント?でもあり、従ってもっと戯画的にやれそうなのだが、やはり最後の場面に「感動」の要素が織り込まれており、滑稽とシリアスの塩梅という点で中々難しい素材でもあったように思う。
    出来れば作品名を冠した一度切りの上演主体ではなく、ユニット名を付けて何らかの継続的活動にして欲しい、そう思わせる座組、企画。

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    2018/12/24 08:55

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