グッド・バイ 公演情報 地点「グッド・バイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    文芸作品のラップ版とでも言えそうな舞台だ。地点の舞台は、作品ごとに舞台構成が凝っていて、今回は舞台一杯に横に長いカウンター置かれ、その上にズラリと和洋酒の瓶が並んでいる。その上に草木が垂れている植え込みのある二重があり、そこで3名のバンドが終始、演奏を続ける。俳優は7名、そのカウンターの前で、リズムを踏んだ「グッド・バイ」という言葉を軸に、太宰の作品を引用しながら、太宰の死に至る経緯をラップ調に語っていく。75分。ずっと演奏は続くから、合わせるバンドも大変だが、俳優も息を合わせながらの動きもあるし、一時間を超えると、言葉が聞き取れにくくなる。それでも、太宰の言いそうなことはわかっているので、ついてはいける。
    太宰の世界は、酒飲みのご託にすぎぬ、というクールな場を設定しておいて、そこから太宰のおなじみの言葉を次々と例の地点的振付とともに俳優が語る。バーの上に飾られたのは玉川用水の土手の草花と言う事も解ってくる。太宰の世界の相対化である。
    それはそれで、面白く見ていられるし、その音楽とテキストと動きを統合したな独特の舞台の完成度は高く評価できるのだが、仕掛けが解ってくると、太宰の世界の中をぐるぐる回っているだけで、地点らしい批評性が見えてこない。飽きてくるころに、太宰の生涯もおわる。バンドも俳優も、75分演奏を続け、歌い(語り)続けるのだから、その迫力はあるのだが、全体は、いつものような硬軟取り混ぜた舞台の批評性が乏しく、一本調子なのが残念だった。
    それにしても、地点のような若い劇団でも太宰に惹かれてクールになりきれない、というのは意外だった。私は、太宰の甘えた被害者意識も、その裏がえしのエリート意識も、日本人の根底に巣ぐっている情念とは思うが、あまり同感できない。グッドバイだ、ということを、地点らしい表現で期待していたのである。





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    2018/12/21 00:33

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