「追想と積木」「いつかの風景」 公演情報 劇団水中ランナー「「追想と積木」「いつかの風景」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初の劇団だが、「根拠のない予想」に違わず?、正攻法で一定の質を獲得した舞台だった。「追想と積木」を観劇。こちらが再演、もう一方の「いつかの風景」は前者の設定(記憶の障害)を男女入れ替えた新作という事である(解説より)。感想を一言に約めれば、「もう一つのも観てみたかった」、と思えた出来。
    青春群像ラブストーリー、と括りたくなる恋愛含有率の高さで役者も登場人物の年代も若者向け、と言えばその通りである。冒頭いかにもな「イイ話」(後で劇中劇と判る)が始まった時だけは不安が過ぎったが、作劇も、要所を押えた演技も一々納得であった。

    ネタバレBOX

    ママチャリ同好会改め演劇サークルの部室(再現)に7年振りに集う元部員、彼らを迎えるのが事故で記憶を無くした男の今カノ。10名。
    現在のシーンは、まず到着した一人を迎え入れ現状を伝える静かな会話に始まり、部員が一人また一人と顔を出す。部活当時の回想シーンは、大勢が登場しフルパワー。話の中心軸は、部員(現記憶喪失男)の闘病中の母の前で、名ばかり演劇サークルを返上、父母の出会いの物語を芝居にして病室で見てもらう事。目標が出来、奮起する部員たち、そこに進路や恋愛話も絡む。
    記憶喪失男が失くした記憶は卒業後から現在までの7年という設定だが、この事で彼はまだ学生でサークルの部員の頃の自分である事になる。気丈な今カノも淋しげな顔を見せる一方、回想シーンの進行で次第に男と思い合いながら成就しなかった恋の相手が浮上する。また、男は浦島太郎よろしく7年後の現実に驚く事の一つに、病院で披露した劇の台本を苦労して書いた男とその彼女となった女性が二年前に別れていた事、そしてサークルの精神的リーダーと言える男女の理想的なカップルが子も授かった今二人の関係に不安を覚えているらしい事。。無論、母が闘病の末亡くなった事も今カノに聞いて知った。時間経過の残酷さを訴える男が「現在」の現実に動揺を投げ掛ける要素と、彼が負ってしまった障害にどう対処すべきか迫られる要素とがない交ぜになりながら、最後には「ここから始める」べき一歩を確認して幕が引かれるという、涙涙の観劇であった。
    脚本上の矛盾もあったが、投げ掛ける素朴な問いと、俳優たちの魅力が凌駕した。

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    2018/12/19 13:55

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