あゆみ 公演情報 feblaboプロデュース「あゆみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    柴幸男の<発案>したユニークな戯曲に、更に演出的工夫を施したfeblaboプロデュース版「あゆみ」を観劇。以前極小空間(野方スタジオ)でのfeblabo版上演を観ており(「あゆみ」の他のバージョンは知らない)、この時は6~7人の女優が、狭いマンションの一室の奥半分の演技エリアを丸椅子で取り囲んだ円形の客席の間に、女優らが座ったり移動する中継点が置かれていた。苦肉の策だが不思議と違和感を起こさず、白い衣をまとった女優たちのしなやかさ、個性と、その個性を超えてドラマを見せる戯曲の強固な構造を印象づけた。
    今回も予想通りこの優れモノの演出が踏襲されていたが、空間が違えばまた趣きも変わり、前に無かった趣向も入れている、にもかかわらず、以前のように「あゆみ」の歩みと同道する自分が居た。ズバリ一言で言えないが、不思議な魅力が潜む作品である。(とことこver.を観劇)

    ネタバレBOX

    まずこの戯曲では主人公の「私」(と交差する人々)が常に一方向へと移動し、役を複数で分担し、リレーで運んでいく事がト書きで指定されている。この形式の劇的効果は特許ものだ。コロンブスの卵と言おうか。。台本には台詞の切り方、割り振り方までは指定せず、上演主体に委ねている。場面々々に要する人数は1~4人程度だから、例えばキャスト4人での上演も、円形なら物理的には可能だ。人数が少なければ役者の「変わり身の早さ」も印象づけ、人数が多ければ(限度はあるにしても)、一人の人生を見守る「多くの目」を持つ舞台となる。キャラも声も、演技態も異なる女優たちが同じ役をリレーで引き継いで行く形式は、箱根駅伝ではないが一つの競技をやりきろうとする姿、仲間の頑張りに応えようと努力する姿も重なり、共同作業という演劇の本質に符合すると同時に、「あゆみ」という女性の(平凡なりに波乱に満ちた)人生を走り抜く姿にも重なる。不思議な感動の源がこの形式の中にある。
    feblabo版は、「一方向」との指定を円を時計回りに巡る形とし、客席が取り巻く形にした。客席と舞台との距離は上記狭小空間でのそれには及ばないが、近い。観客ははじめ、普段モードで役者が入場し、自らの楽器演奏に乗せてリズミカルに前説をやるのを見る。「芝居」が始まるのは、役者がある役に入った瞬間であるが、その後も他の役者が入れ替わり立ち替わるため、ドラマそのものに没入して行く訳ではない。殆ど見知らぬ無名の若い女性たちが、役として存在しない素の彼女らとして居並ぶのを、観客は普段初対面の相手を見るように見ている。(ある小さな一役を除いて)特定の役を当てられている訳ではない女優は、主人公の「私」を役者全員がほぼ均等に担い、また頻出する母、高校の先輩、職場の後輩なども、全くカラーの違う女優ら(共通点は白い衣裳のみ)が次々演じる。
    この「キャラを飛び越えて一つの役が共有される」点と、「素の彼女らが(役への出入りも含め)見えている」点が、この形式の最大の特徴だ。
    さて、役者らははじめ、傍目には「かぼちゃ」というと失礼 だが「演じる要員」として配置されている。が、問題はその後だ。
    「観客は役ではなく役者を見ている」、とは、古い演劇人の吐いた言葉だったが、「あゆみ」の形態でその事は明白となる。正確には、役に取り組もうとする役者の姿が見える、と言うべきだろうがそこには抜き去り難い個性がある。8人の女性らがそれぞれ、任務として人物を受け継ぎ=役に入り、担い、次へ渡す、という「行為」を続けて行くが、このプロセスを何度も見せて行く事で役者自身を披露していっているのだ。
    ここに柴幸男という演劇人の志向するところが見え隠れする。・・「適役があるか否か」は俳優を選ぶ基準とはなり得ず、「うまい俳優」が必ずしもこの劇を感動的に仕上げる訳ではない、という事。
    今回目にした彼女らが素人役者という事では決してなく(未熟な面はもちろんあったが)、一人一人がぶつ切りの場面を演じては退場する、否応なく目に入るその「現象」から、揺るがないものが痕跡として残っていくのだ。
    (うまく要点を掴めず長文となりにけり)

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    2018/12/19 02:40

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  • ご来場いただきありがとうございました!
    とことこver.のウッドブロックを演奏していた伊藤優と申します。
    ご感想ありがとうございます!

    伊藤優
    ホームページ:https://yuito-actor-tokyo.jimdofree.com/
    Twitter:伊藤 優 Yu Ito (@s98363830)https://twitter.com/s98363830?s=09

    2018/12/20 10:46

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