群盗 公演情報 劇団俳小「群盗」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    冒頭は劇中劇のような感じで、陽気な若者たちが居酒屋で将来談議、談笑しているような場面から始まる。舞台美術は奥行きがあり、将来という時間空間を表し、タイトル「群盗」として行動する場所的空間をも表しているようだ。もちろん、主人公カールの出身地・家にも関係してくる。上演時間2時間30分(途中休憩15分)と長いが、原作・フリードリッヒ・シラー、脚色(菊池准 氏)はもちろん、演出もピアノの生演奏・歌などで観せる工夫をしている。
    当日パンフにも記されているが、原作者はシェイクスピア作品に影響を受けたとあり、本公演でもその雰囲気は感じられた。

    ネタバレBOX

    舞台は、やや上手側に両開き扉、そこから斜めに客席側に向かって敷台のようなもの、一見変形した遠近法的造作である。冒頭はその敷台にテーブル、椅子が置かれているが、物語シーンごとに動かし情景を変化させる。下手側にはピアノ、車いすが置かれ、壁には絵画が飾られ物語で使用する物の概観を見せる。全体的に重厚な感じを受ける。

    梗概…モオル伯爵の長男カールは自分の正義感を貫くため,社会の秩序や人権抑圧に反抗するため盗賊団の頭になる。しかしそれによって生じた混乱は、自分の犯した罪が原因であると認識する。世の不正と戦うために,自ら不正を行なった者の皮肉な運命が叙情豊かに描かれる。

    兄弟の悪_兄カールは自分勝手な考え方、生き方を貫き通すという歪んだ人生美学、弟フランツはあくまで自分の欲望を満たすために平気で他人を犠牲にする。この芝居は表層的にはフランツの悪行が目立ち、カールが肯定されそうだが…。しかし自由を求め、仲間との信義を守るためとは言え、病人・老人・子供を多数殺す行為、だが実行直後に悔悟することもない。それこそ「無法によって法律を壊す」の表れであろう。そして「一度壊したものは、元に戻せない」とも。
    さらに、カールは自分を信じ、愛してくれている婚約者アマリアさえも、仲間との約束を果たすため殺してしまう。自分の生き方に悩み苦しむ姿、それこそ人間が生きる過程そのもの。生きるべきか死ぬべきか、カールは、自死は神への冒涜と信じ思い止まり、フランツは最期に神に救いを求めるが、自死を選ぶ。
    群像劇であるが、その中にあって兄弟それぞれの生き様がしっかり描かれ、”人間臭さ”を浮き彫りにする見事な演出であった。

    兄弟は己の信じた道、生き方をしており、 見方によれば独善・自分勝手と思われるが、それこそが人間の本能であり在るべき姿なのかもしれない。カールの自己矛盾した生き方に気づき、それでも(仲間と)生きようとする姿、そこに滅びの美学を感じてしまう。
    ちなみに冒頭、若者が理想・持論を声高にアピールする場面、それはカールだけが持っている特別性ではなく、人は誰でも内在しているということか。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/12/15 00:29

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