群盗 公演情報 劇団俳小「群盗」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/12/13 (木) 19:00

    ドイツロマン主義の傑作。
    ピアノ伴奏を入れ、ある面歌唱劇として、メロドラマ要素と役者の躍動を盛り込み、テーブルと椅子の配置で、大芝居をテンポよく描き切った力量には感心。
    そもそもが、その舞台設定の大きさから、リーディング劇を想定して書かれたものだったようだが、d-倉庫の奥行を一杯に使って、大劇場にも負けない見せ方だ。(宝塚で上演が予定されているというのも納得)

    勝山了、渡辺聡、米倉紀之子、大川原直太、主役4名の、見得の大きな芝居もこうした古典劇を演じるには、必要不可欠。観ているこちらも清々しい。
    ラストの、悪役弟フランツの自死、父モール伯爵の衰弱死、自らの罪悪感と仲間のために去り行こうとするカールに懇願して殺される恋人アマーリエ、なんかえらく歌舞伎チックだなあと思って調べたら、日本初演では歌舞伎演目に翻案されて上演されたとのこと。さもありなん。日本人情緒に訴える内容なのだよね。

    ただ、この舞台でのメッセージ性と舞台冒頭の設定は疑問。
    シラーがこの作品で、カールの自由への強い訴求を描きたかったことは、広く認められているところ、そこで様々な苦悩と悲劇が生まれていく。
    そこで、演出に際して、現代の閉塞的な社会状況を打破して、自らの力で自由を勝ち取ろうという、メッセージが強く打ち出される。ラストの登場人物全員による、自由を求める歌(既存の曲なのかどうか、題名も知らないが)の大合唱に、それは集約されている。この合唱はとても心地よい。
    ややステロタイプなメッセージのようだが、あくまで描き方が問題なのであって、けして陳腐な古臭いテーマというわけではない。
    しかし、カールの自由への訴求は反権力や民衆への共感といったものではない。彼は、義賊的な振る舞いで仲間からも一目置かれながら、仲間を死刑から助けるために、街を燃やし老人や子供、病人を中心に80人以上も殺してしまう。彼自身、自ら自由を求めながら、実は無法に振舞っていただけだと気づき、それを独白している。果たして、カールの生き方は現代に本当に通ずるものなのか?
    そして、このメッセージを伝えるために、舞台と現代を通じさせるための演出として、冒頭では、登場人物たちが現代の若者として、自らの価値観や求めるものについて面白おかしく、酒を酌み交わしながら議論をする。
    そして、ある男の発言(フランツ役)から、舞台は本筋に入るという趣向なのだけれど、これがどうもわかりづらい。こういう導入なのだとすれば、最後でそれに対するアンサーがあってしかるべきだが、それがない。カールの独白から本筋に入るというのであれば、ラストのカールの行動や合唱は一応のアンサーになっているとは思うのだけれど。

    もっと、魅せることのみに邁進しても、よかったと思う。
    それができるだけの十分な舞台美術や、役者の言葉と動きがあったのだから。

    惜しむらくは、主役の方々が盛り上がるところで、ちょっとずつ噛んでしまったこと。
    それと、これだけの舞台なのに、ちょっと客席が寂しかったのが残念。

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    2018/12/14 11:12

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