時代絵巻AsH 其ノ拾参『紫雲〜しののめ〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 其ノ拾参『紫雲〜しののめ〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「白煉~びゃくれん」「水沫~うたかた」そして本公演「紫雲~しののめ」をもって平安時代末期の朝廷・公家中心の時代に武士が台頭してきた社会…その叙事詩(題材は平家物語中心)は完結したかのようだ。朝廷・公家による政治と武家社会を確立しようとする、卑近な例で言えば階級闘争または改革のような守旧・新興勢力の主導権争いといった社会情勢、その潮流に飲み込まれた人々の心情を柱に描いた三部作のようだ。
    物語は人物の心情情景に重きを置き、時代の趨勢はあまり感じられない。あるとすれば、「白煉~びゃくれん」にも登場する後白河院の動静であろうか。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台美術は「水沫~うたかた」と同じ、邸内中庭といったところで客席寄りが庭で殺陣シーンに配慮した空間がある。なお、照明は明暗陰影という単調なもののように思えた。

    物語は冒頭、牛若丸と弁慶の出会い、京の五条大橋の場面。それから奥州平泉の藤原家、源頼朝との兄弟再会、平家滅亡、奥州藤原家の滅亡という教科書的な史実を順々に伝える。先にも記したが、社会云々よりはその時代を生きた人々の立場と心情に重きを置いた描き方のため、時代の趨勢といったダイナミックな変化は感じ取れない。ただ政(まつりごと)の主導権、それを後白河院と頼朝の権謀術策を思わせる遣り取りは、緊迫感があり現代政治にも通じそうな蠢きを思わせ興味深かった。

    全体的(三部作とも)に、悪役は登場せず立場や思惑、感情の行き違いが人間関係、特に兄弟という身内の不信感、疑心暗鬼へと深まり操られるという悲劇に向かう。前作「水沫~うたかた」同様、いやそれ以上に心情描写が厚く熱く語られ、ハンカチを握りしめる人が多く、終演後もその余韻に浸っていた様子。その意味では情感豊かな演出が上手く、それに応える役者陣の熱演が素晴らしかった。
    一方、殺陣シーンは少なく、本公演に限ってみれば観たという印象はほとんどない。

    公演の見所として、その時代を懸命に生きようとした男(漢or武)のロマン、主従という縦関係を別にすれば、信頼と信義という人間の尊い一面を描き出そうとしているところ。ゆえに基本的に悪者は見当たらず、立場・思惑等が人の心を支配していると…。そこに時代を超えた、この芝居の主張があるのかもしれない。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/12/13 21:54

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