女中たち 公演情報 風姿花伝プロデュース「女中たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/12/11 (火) 19:00

    座席1階A列9番

    「女中たち」言いえて妙な題名だと思う。
    フランス語に「女召使」「お手伝い」「家政婦」などと言う表現の区別があるのかは知らないが(ソランジュはたびたび自身のことを「召使」と呼んでいるので、その程度の違いはあるのかも)、これはやはり「女中」でなければいけない。

    冒頭の、横柄な奥様と卑屈な女中のやりとり、すでに散々書かれているが、これは女中姉妹のソランジュとカリーナとのごっこ遊び。連綿と続く日常のうさばらし風景と言えばそれまでだが、観客はこの場面を通して、ジャン・ジュネにより1つの世界観の中に放り込まれることになる。
    それは、粗野で野蛮で下卑た世界。言葉は暴力を持ち、行為は隠蔽と加害に満ちている世界。

    女中衣裳に着替えるカリーナは、普段の荒い言葉使いに戻り、ソランジュは妹を馬鹿にした表現をまき散らす。
    舞台中央に彼女たちは設けられた回転式のオブジェは、彼女たちが鏡像で一体であることを常に表象し、お互いの言葉と行為が、相手と自らを傷つけながら癒し合うという、対照関係を見せる。

    まだ3日目、中嶋朋子さんと那須佐代子さんのコラボは、ますますよくなるだろう。コトウロレナさんも、もっとこなれてくるでしょうし。(ただ、シースルーのノースリーブワンピース、とても似合っているのだけれど、役柄からすると少し違和感があるなあ。もう少しシックな装いの方が女中たちとのバランスもよいかと。)
    そこで、評価は現時点でのもので。

    ネタバレBOX

    女中たちは、旦那様の犯罪を密告し、刑務所に入れるが、保釈によって出てくると、次はその露見をとめるため奥様の殺害を図る。奥様の殺害は、冒頭ごっこ遊びのラストで常に設けられていた設定で、予見されていたのだが、これはごっこ遊び同様に未遂に終わるわけだ。

    ソランジェは、金を盗んで逃げようと提案するが、カリーナはそれを拒否する。
    なぜならば「私たちに行くところはないのよ」

    これが「女中たち」というタイトルに込められた全て。
    旦那様を嵌めるのも、奥様を殺そうとするのも、憎悪の蓄積の結果ではなく、彼女たちが「女中」であることの必然的な顛末。嫉妬も卑屈も裏切りも彼女らが「女中」になった時に宿命づけられたものだったことを、ラストのソランジェとカトリーナの会話が醸し出す。カトリーナの死の後、自らの半身を失ったソランジェはどうして生きていくのか。

    そもそも、姉妹などはいなくて、1人の女中が内なる2人の自分のうち、1人を殺す物語だったのかもしれない。

    先般観た「スカイライト」でも、そうだったけれど、風姿花伝プロでデュースをしていた中嶋しゅうさん、影響力の大きさを今回の舞台でも感じたと共に、あちらこちらで漏れ聞こえる女性の賛美。もてた人だったんだなあ、とただ感嘆。

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