満足度★★★★
SPAC今期の三作はどれも観るぞ。との願いは二作目まで叶った。
三つの中でも「歯車」が最も正体不明、戯曲でもなく、著名な作品でもない。未知数度が高いため観劇前にネットの青空文庫でざっと半分ばかり目を通した。
「歯車」は芥川龍之介晩年の、というより殆ど遺作であり、「死」の影が随所に出没する。語り手が語り手自身を「僕」の一人称で綴るこの文章では、確かなストーリーとしては湘南の実家から披露宴のある東京のある場所への移動くらいのもの。文章の殆どはその過程での「僕」の心象風景か幻影か、実際目にした事物からの連想や投影されたものの描写である。
多田淳之介演出が強く出た舞台であるのは予想通りであったが、二時間弱と長めの舞台、ストーリーの薄い題材がどういう出し物に結実したか・・説明し難いが全体の印象と合わせてネタバレに。