満足度★★★★★
川崎市で初めて訪れたエリア、住宅が立ち並ぶ一角に佇む京浜協同劇団さんのアトリエ。
受付を済ませ通路から事務室、会議室を通り抜け、ぐるぐる階段を上ると、なんとそこにはしっかりとした劇場が!
アトリエ公演ということで、もっとコンパクトな会場をイメージしていたのですがステージのスペースも充分あるし客席も一列ごとの雛段に。
頂いたパンフレットもA4冊子で、読みごたえあるかなり立派なもの。
そのパンフを読んでみると、劇団員平均年齢は69歳。
今回出演される若い役者さんは全て客演だそうで「彼らはあっという間にセリフを覚えるけど仕事の都合で稽古になかなか間に合わない。劇団員は時間にキチンと集まるけどセリフはなかなか覚えられない」という一文が何とも微笑ましい。
とはいえ公演の中身はシッカリしたもの。
映画の「楢山節考」は観ていませんが、おそらくこれをそのまま舞台化したのでは終始重たい空気に支配されそうなところを、核心はそのままに、かなり観やすく脚本・演出で工夫されていたのは充分に伝わってきます。
楢山祭りを控えた村民はどこか浮かれており、最初のうち暗い影はチラリと見え隠れする匙加減が後になって効いてきます。
因習とはいえ自ら率先して姥捨てを選択した「おりん」は84歳の女優さんが演じられて、これがまたウイットに富んだユーモアがあり何とも愛らしく、その人柄に思わず引き込まれてしまいます。
正しいかどうかは別にして、徹底した思ん量りの精神は哀しくも凛として美しく感じました。
老いも若きも皆さんの力強い演技にはパンフに書かれていたような事情もすっかり忘却の彼方に。
劇団の歴史が沁み込んだクラッシックな建物に入った時から異空間。
時代を超えた叫びを聞いてきたようで自宅に帰った今は、夢を見てきた様な不思議な感覚です。