僕らはZOOっと生きている。 公演情報 ACファクトリー「僕らはZOOっと生きている。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     尺は155分くらいか。

    ネタバレBOX

     観終わるまで尺の長さは感じずに観ることができたのだが、17時から四谷で用事があったので尺の長いのは言っておいて欲しかった。開演が遅れたのも悔しい。
     脚本は、一般的な観客を想定して擽り、ダンス、歌唱、殺陣も入れてかなり上手に組み立てていると思う。満月を産婆をやっている蘭学医が見、命との関連を述べたり、其処にUFO(虚ろ船)が現れて我らの身体を構成する総ての物質が宇宙の生成によって創られたことを暗示していたり、実際、満月の夜には多くの生命の繁殖が見られるという事実をさりげなく示唆し、後の展開の伏線としていることもグーだ。
     時代設定が1867年(慶応四年)という明治政府誕生前年という緊迫した時代であることも良い選択である。オープニング早々のダンスでは、明らかにダンサーを用いていると観た。体の切れが違う。歌や踊り、殺陣が随所に入るのだが、これらも中々上手い。
     一か所残念に思ったのはタカコの父が、足が悪いのにダンスシーンでは健常者として踊っている点だ。ハンデある方々への差別問題とされることになるのを避けたのかも知れないが、ここは、回復しようの無い痛手を負っている姿で躍らせることも一つの見せ方だとは思う。それを観客が笑うならば、観客の感性のグロテスクを嗤うようなシーンを入れれば良いだけのことだ。(少し高度になるし、煩瑣ではあり、リスクを伴うかも知れぬが)
     基本的にしっかりしたシナリオであり、役者達の演技、演出ものびのびしていて良い。リアリズムに拘る人々からは、言葉(時代の、地方と江戸の等々)やUFOが飛び出したり、河童などのUMAが話の中に入ってきたり、宇宙人迄飛び出してくるのだから荒唐無稽の誹りを受けるかも知れないが、今作の狙いはそんな所に無いことはあきらかであるから、観客も己のイマジネーションを解放して楽しむと良かろう。そうすれば、蘭学医の熱も、娘タカコの純真とひたむきな情熱も、おじさんのちょっと内気で真摯な姿勢も、パピコの下敷きになっているかぐや姫のことも、住職の神聖なキャラクターも、鳥飼いの強さの秘密も、寺社奉行の如何にも官僚然とした態度へのおちょくりも、世界を漫遊している男の認識の重要性も、更には天文方・通詞として当時最先端の情報を用いて時代を動かしかねない男の意味する所も、詐欺師兼ねずみ小僧として活躍する住職代行と銭形平次紛いの岡っ引きのジョイントするものも、住職の腹心だが、真面目過ぎて狭量な尼の生き方も、そして猿回し、獅子舞、大工や飲み屋のおかみも、茶店の看板娘などによって顕になる庶民の姿も、抜け目のない幕臣とその上司で抜け作の西洋かぶれ等々も。
    いくらでも深く読み込めるキャラクターたちを登場させ、様々な想像をさせてくれる実に面白いエンターテインメントであった。

    0

    2018/11/17 02:03

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大