ああ、それなのに、それなのに 公演情報 名取事務所「ああ、それなのに、それなのに」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    別役実の新作公演。別役の痛快なる面白さを知った別役実フェス(3~4年前になるか)での名取事務所「壊れた風景」(真鍋卓嗣演出・下北沢小劇場B1)と演目以外同じだ。一年にわたったフェスで二本の新作が上演、その後は・・あったっけ? 病に臥しながら一劇作家が生涯に書く戯曲数の記録を、未だ更新し続けているんである。
    日本版「不条理劇」作家と言われながら、別役実の作品は、奇妙な言動や展開に対する謎解きが後半にあったり、比較的「普通」なやり取りの結果としてたまたま奇妙な事になって行くというケースが多い。不注意や無関心、逆に強い思い入れなど、個々の個的事情が絶妙に組み合わさる事で奇妙な状況へと進む、言わばコントの要素がある。その不注意や無関心等の中に「それがためにかくなる事態になれり」を示唆する要素も当然ある訳だが、作家ご当人は作品に「狙い」(教訓?)が見えるのはよろしくないと考えておられるフシもある。
    長い模索の辿り着いた先だろうか、それとも老境の為せる技だろうか・・今作は展開の飛躍の度合いが桁違いで、作者は散乱したそれらを終り近くで回収しようとした様子も窺えるが、回収し切れず、ピカソのようで遺跡の壁画のような、抽象画がそこに置かれた。
    仄かに、人物連関図の「外部」(不知の領域)が肥大していくイメージがあり、予測できない外部からの関わりにどうやら翻弄されている人物らは、その事で視野が狭まり疲弊している事には気づかない様子・・今の日本の疲弊と政治的無気力が体現する一つのイメージと見える感触があった。「意味」から見放された世界(ディストピアと言って良いように思う)へと向かう予感でもある。

    しかしこれを担う役者の働きは大きく、らしくない?顔芝居を見せていた森尾舞がこの「奇妙な世界」に貢献していた。

    0

    2018/10/29 10:18

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大