満足度★★★★
鑑賞日2018/10/17 (水) 17:00
ゲッコーパレードの十八番。
毎年、家屋を替え乍ら上演されている作品らしい。今回は早稲田演劇博物館という、大物を相手に演じられた。
最近、ブレヒト作品を見かけることが少なく楽しみな演劇。
1日3公演なのだけれど、家屋の部屋を巡るという性質上、観客数も限られていて1公演20名。
ここのところ、大隈大講堂でのイベントでも、早稲田演劇博物館開催のものでは抽選に外れまくっていたので、
今回の当選はまさに神の僥倖かな。
定時前、荷物をロッカーに預けて、33時間を1時間に凝縮したリンドバーク大西洋無着陸飛行の旅へと出かける。
彼がなぜこの冒険に踏み込んだのかは判らない。彼は観客1人1人に挨拶と握手をし、飛行機に搭載する荷物を列挙し、海図を拡げる。ガソリンは持つのかを不安がり、磁石は最上級の物を調達したことを自慢げに述べる。
天候はけしてよくないが、待ち続けることもできない。
彼は、愚か者と揶揄されることも恐れず、霧の中旅立つ。吹雪に出会い、時として海面すれすれになることもあり、疲労と高いテンションを持ってただただ、操縦を続ける。
なぜ彼がこの冒険を思い立ったのかは語られない。ただ暗示されるのみだ。幼稚さの克服、いまだ到達されえないものへの憧憬、文明による自然の支配。
死への接近、恐怖と楽観。スコットランドの半島では、やっと飛行機が発見され、彼の生存が確認される。(ここでは、観客参加型のセリフ芝居となる)彼は飛行機を降り、飛行機整備をした仲間たちに、感謝の辞を述べて雑踏の中へと消えていく。
屋外でのラスト。つい涙が浮かんだのはなぜだろう。リンドバークの内面を追体験したからなのだろう。雨降らないでよかったな。淡々としながらも濃密、音楽効果も高く、建物の構造に則した視線、導線。一見の価値あり。