塒出(とやで) 公演情報 STスポット「塒出(とやで)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    ダンス系パフォーマンスの拠点STスポットに詣でる機会が多くなった。今回は新聞家主宰の人×ダンサーのコラボという事で、未見かつ評価も知らない二人の作品を観に劇場に足を運ぶ。全くの白紙で観劇に臨んだ者がそれなりに「二人が組んだ理由」を、僅かでも納得して帰る事が「成果」と言えるとすれば、私には殆ど成果が見出せなかった。
    先立っての三条会の芝居の序盤、生徒が延々とふざけながら「ひかりごけ」を読む場面が続いた時、お年を召した一人のお客が席を立って行かれた。何を見せられているのか判らなかったのだろう。演劇の「進化」の過程とはそういうものだと納得しているつもりではあるのだが。

    ネタバレBOX

    このパフォーマンスは私の目には実験・試行である。拭えないのはこの程度のお試しを3000円という入場料を取って演るには、それだけの知名度というか期待が寄せられているのだろう事を想像する。人気の源は過去作品にある訳で、過去から現在に何が通底したのか、アフタートーク(ゲスト:佐々木敦)から手がかりを探ってみる。色々質問をして「段階的に」理解して行くプロセスを佐々木氏は踏んで行こうとされているようだったが、客席からの意見も交えた論議から、新聞家・村社氏の演出におけるこだわりが見え隠れし、今回の試行にある程度反映されたようだ、という事は判った(気がした)。
    音響なし、照明変化でチャプターを分割する。テキストを発語しながら、ある踊りを踊る。1,2,1,2とメトロノームの数値で言えば50/1min程度だろうか、盆踊り系の仕草が1拍に1動作という感じで始まり、緩慢さが極まる。台詞を言うプロでないダンサーがテキストを言うのには楽な始まり、という風に見える。盆踊りは一巡りの仕草を音曲の拍にだけ合わせて踊る(曲の頭に同じ仕草が来るとは限らない)というものらしい。足は拍ごとの歩行、手の位置がほぼ仕草の全て、というくらい身体的負荷は小さく、しかも曲に合せて延々と続く事が「面白さ」であって仕草のみで「面白さ」は見えにくい(そのように作られた代物ではない)。曲の代りに、ぶつ切れの、本人が語る言葉が流れる。さてこれは・・。張らない声で仕草の合間を縫いながら台詞が出され(それはそれなりに難しい仕事だろうとは思う)、5分位は同じパターンを繰り返す。と、立ち止まってチャプター変化。私がみた所では3パターンやったら最初のパターンに戻った。そこは私をガッカリさせた。というのは動きが次第に変則的になり、難易度が高まるかと思いきや、楽な最初に戻ったからである。
    トークの中で触れられないもどかしさを感じたのが、テキストそのものについてである。話は断片的に頭の中にイメージを作ったが、はっきり伝わらない。テキストを聞かせようとしているのかも判らない。ダンスとの関係が不明瞭なため、焦点をテキストに合せているのかテキストはダンスの添え物なのか位置づけが判らない。書き手とダンサーとのコラボというより、新聞家の「理論」をダンサーで試してみた、という形。従って書き手として「伝えたい」はずのテキストは、パフォーマンスのための道具で、特段これでなくてはならなかった訳でもないらしい、という理解となる。ならば一体何を見せたかったのか。という思いが残る。
    「試行」は失敗の可能性を含む。今後のクリエーションに生かされる事になるかも、という想定で星はかのごとく。

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    2018/10/05 08:12

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