咲き誇れ 公演情報 トローチ「咲き誇れ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    赤坂REDという端正な劇場に、土着臭が魅力の松本哲也戯曲が合うだろうか、と気にしながら観劇。相変わらず「痛い」人間が登場するが、どの人物の目線に合わせるか、焦点が定まらない「探り」の時間が長く、しかしヒントと思しい言葉が気になりながら回収の時を待つ。やがて関係図が鮮やかに表れてくるのが松本戯曲の魅力だ。
    よくぞ「痛い」人物を作り上げるものだ。実際にはどこかに居ておかしくない人物であり、心の奥を覗けば誰しも身に覚えがあったりもする。
    どの人物も主語で語れるドラマを持つ群像劇の中で、約一名掬い切れなかった人物が気になるが・・。(どうとでも位置づけ可能なパイとして、自分がステージでギター弾き語りもやる店長、明日閉店でも平然としている人物を置くというのも、うまいと言えばうまい。)

    ネタバレBOX

    自死を選ぼうとした男がどうやら「病院に担ぎ込まれたらしい」と状況を伝える台詞に、観客自身が望めば「希望」を見いだせるだけの余地は残される。照明が静かに暗転へ移行すると、いやどうしても生きてもらわねば困るしそうなるはずだ・・そう願っている自分がいる。この「補完」を観客に促すぶっきらぼうなラストだ。
    が最も蓋然性の高い展開は、それだろうか。剣呑な話題(「痛い人」の不注意で同僚を事故死させた事)には、当人が更生した分だけ、他者から言及されやすくなるのが常。それに耐えるだけの素地が「彼」にあるかのか・・いや、無いだろうというのが彼が姿を消す直前までの印象だ。
    彼の偉そうな口ぶりは、後から解釈すれば「俺はダメだ」と言外に告げていて、つまり、己のダメさ加減を彼はある仕方で悟っているようなのだが、それを「分かった」とて「変われる」わけではなく、一度ニヒルを飼ってしまった更生困難な「心」を持て余して、甘えるだけ人に甘え、己に絶望する「彼」という存在がそこに転がっている。1㎜も言い訳できない無惨な醜態を晒して丸太のように転がされている。
    だがその存在を芝居は見放さず、突き放し過ぎず、見つめているのだ。
    ・・・人間の本当の姿、弱さを抱えた姿(時にそれは罪を背負う加害者の顔をもつ)を「見据える」というその事の中に、微かな光明をみる。

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    2018/09/26 04:50

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