「中田ステーションセブン」2018.9.19 19~A1projectB 劇小劇場 傑作「シーチキンサンライズ」のスピンオフ作品だ。流石に熟練した作家の作品である。元々、友澤氏の作品の科白は深みのあるもの、ハッとさせられ、何時までも記憶の奥深くに息づくものが多いのだが、今作ではそれが更に円熟味を増した感がある。舞台美術も、作品に共通して用いることができるよう配慮されつつ、而もその細部に至るまで実に丁寧、綿密に創られていて感心する。役者の導線についても実に合理的で隙が無い。舞台芸術というのは、今更言うまでもないが、物語の展開する場所を何処に設定するかでその成否が決まるほどに大きな意味を持つのだが、その点T1プロジェクトの作品は、いつ拝見しても極めて優れている。 さて、本題に入ろう。シーチキンでも、ヘミングウェイに纏わる科白が随所に織り込まれて作品の幅と奥行きを深めていたのだが、今作もそのスピンオフ作品であるからこの手法がさりげなく用いられている。有名な作品の名前だから、観劇中に直ぐ気付くであろうが、この“The Sun Also Rises”が今作のテーマとも、またたくさんの作家、役者ら演劇人を育ててきたA1プロジェクトリーダーとしての友澤氏から若い人々へのエールとしても呼応しつつ重層的に機能する点に、これだけの大所帯を維持してきた氏の度量と人間的深み、優しさを感じると共に、作品を創る楽しさを知る者のみが持ち得るエネルギーを感じる。 主人公の遼役の演技は無論のこと、セブンの面々、後輩たち各々の演技も、いつも通り、各々のキャラが立って見応えがある。物語の肝も流石と唸らせるものである。初日が明けたばかりなので詳細は明かさないが、一瞬で世界が変わるその手際は見事と言う他ない。
よろしくお願いします。
ハンダラ 拝