よろしくマイマザー 公演情報 劇団晴天「よろしくマイマザー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

     設定ミス。

    ネタバレBOX

     序盤、余りにリアリティーが無いことに白けてしまう。これは、物語が起こる場所の設定が雀荘ということに起因する。描かれるのがホールドラマなのに、それが進行するのが雀荘という点にリアリティーの欠如が出来する必然性があるのである。
     これは違法ではあるものの、掛けずに麻雀をすることは通常あり合えない。まして雀荘であれば、場所を使用するだけで支払いが発生するし、その上メンバーで決めたレートで金銭の授受がある。負ければ痛い目をするのである。だから遊びではあっても皆それぞれそれなりに真剣である。まして雀荘の常連が多数登場するということになれば、口三味で上手いことカモを引っ掻けてグルになって、積み込みや牌の融通などのイカサマを用いてカモから巻き上げるのは常識だ。だからこんなホームドラマの展開する場所としては不適切そのものなのである。それがあってということもあるだろう。つまり実際、それなりに真剣な勝負をしている以上、会話は口三味であり、利害の絡んだひっかけ、腹と手の探り合いであるからホームドラマどころかかなりダーティーでグレイなゾーンなのである。傑作映画「麻雀放浪記」などでも決してこんなチャラけた場面は入れない。寧ろ喧嘩になれば、プロボクサーとの喧嘩、ヤッパも飛び出す、ヤクザも出てくるという世界なのである。
     結論から言って、完全に設定の失敗である。一方、物語は斑認知を発症した母に振り回される家族と店の常連の心の交友、認知症を発症した家族の面倒を見続けることの苦脳と大変さを通じて、現れる各々の本音、個々の人間のあからさまに近い姿を描くことにあるのだから、要諦は店を支える家族とそこに集う常連たちが自然に見える場所を考えればそれで済むハナシだ。例えば民宿の食堂などでも良かろう。舞台をつくる場合、物語の展開が何処で進行するのかを上手に決められればそれだけでかなり作品の筋道が見えてくる。それほどに重要な要素だということを深く認識すべきである。設定に無理があるから、何ら必然性のないおチャラケが必要になり、芝居そのものが中心性を欠くばらけたものになってしまうのである。結果この設定ミスと序盤の集約点の欠如が、中盤折角極めて良い話を展開しているのにも関わらず、最終部に結実してゆかないのだ。中盤のシナリオだけ取り出してみれば、極めて優れた科白もあるだけに残念である。
     一方、舞台美術は、合理的で効果的である。役者陣の演技も悪くない。今後ここで指摘した点にも気をつけて作品を創作して行って頂きたい。

    0

    2018/09/09 04:18

    0

    3

このページのQRコードです。

拡大