満足度★★★
なぜこの北欧の寓話を日本で舞台にしようとしたのか、結局わからない。
原作はデンマークの国民文学、映画も傑作と言われる出来で、それぞれに深く愛している人たちもいる。それを越える結果は望めないにしても、この素材を扱うなら扱うだけの心意気を見せてほしい。
俳優全員を白の衣装にするとか、ダンスをいれてみるとか、バベットのフランス語なまりを東北弁でやってみるとか、晩餐を幕で見せるとか、全然作品の本質に関係ないところで小手先の気を引くだけでつまらない。肝心の、革命で、天職を奪われた犠牲者が、その職を理解しない寒村に流れてくる。その寒村の人々には自然の生活があり、その中で生涯を貫いて生きるよすががある。それぞれの地域に生き、宗教も異なる人間の人生と真実が、宝くじが当たったことで実現する一夜の奇跡の晩餐でほんの一瞬だけ明らかになる。と言うところがぼやけてしまって見えてこない。
原作より、としていないのならいいが、これで日本の変奏と言うなら、ちょっとデンマーク国民に申し訳ない底の浅さだ。。
俳優も久しぶりのかもねぎショットで落ち着かずバラバラの印象だが、一人か二人はブリリリアントな役者が居ないとこういう抽象性が強い話は苦しい。おばさんたちの井戸端会議の連続のようになってしまった。唯一の男性配役は、原作ではものすごくおいしい役なのだがこれも不発。唯一旨いと思ったのは選曲である。