OPTIMISM 公演情報 アブラクサス 「OPTIMISM」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ヘレンケラーを題材とした公演は3作目。前2作はせんがわ劇場で上演しており、この劇場より広い。本作におけるヘレンケラーの人物像なりは前作をも凌ぐ見事な造形であったが、芝居的にはこじんまりとした印象を受けた。
    劇場の規模を比較して意味があるのか分からないが、少なくとも せんがわ劇場では素舞台に近い。あるのはテーブルと椅子が数脚。周りは暗幕で囲い、脚本・演出・演技で魅せる力作であった。本作は屋敷内を作り込み過ぎたようで、言葉はおろか自分が何者(人)かさえも認識できていない”子供=ヘレンケラー”の行動が舞台セットによって妨げられている。何気にテーブルの周りを回ったりしているが、”痛い”という感覚本能を持っていたか否か判然としないが、観客としては作為的な動きに見えてしまったのが勿体ないところ。
    (上演時間2時間10分)

    ネタバレBOX

    セットは屋敷内_中央にテーブル・椅子や飾り棚が置かれ、下手には窓。客席寄りに階段がある別スペースを設けている。当然、有名なシーンである井戸も見える。
    梗概…ヘレン・ケラー(羽杏サン)とアン・サリヴァン(坂東七笑サン)との出会い、結びつきが中心に描かれる。その意味ではヘレン・ケラーの人生に大きな影響を与えた人物との関わり、言葉の認識というプロセスが中心であり、その見せ場として井戸での水汲みシーンが有名。見せ場における2人の演技は上手い。その臨場感は圧巻である。

    この公演でもその描き方は他の劇団公演と変わらない。しかし、ここではその後のヘレン・ケラーをも描き出す。人(障碍者)として社会との関わりを持った人生も丁寧に描く。多くの劇団は水汲みシーンで終幕とするが、それは演劇的な見せ方として魅力的であり、評伝(記)にも差し障りがないからではないか。この劇団では、文献では知りえない事柄を独自の解釈・演出によって表現しようと試みている。

    しかし、公演ではヘレン・ケラーの人種差別に反対する運動や労働条件改善の訴え、南部黒人集会での演説や講演を紹介する。そしてライフワークになる社会福祉活動。自身の経験を踏まえた公演は、世界中へ。また経済的な困窮からボードビルショーにも出演したことが描かれるが、これらは彼女に関する文献を調べれば知れるところ。評伝の内容を演劇化する、それはそれで面白いかもしれないが観る人の感性や主義主張に左右されることがあるような。

    それよりは、”人格形成後(者)”としてのヘレン・ケラーではなく、社会との関わりを持つ前のまだ学生としての未成熟でどん欲に知識を習得する。そんな彼女の上級学校に進学してからの考え方、物の見方など成長する”過程”を観てみたい。そこには完成された人物の評伝記ではなく、まだ知られていない生身の人物の生き様が刻まれそうだ。それこそヘレン・ケラーの人間的魅力(例えばダンスのシーン等は秀逸)が潜んでおり新たな人物像の形成になると思う。芝居ゆえにその自由(発想)度を広げても良いのではないか。そんな芝居を観てみたい。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/09/07 18:22

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