ミセスフィクションズ夏の振替上演・上映会 公演情報 Mrs.fictions「ミセスフィクションズ夏の振替上演・上映会」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    Mrs.fictionsの長編舞台初観劇と期待した「月がとっても睨むから」の代わりに、『花柄八景』を映像で観た。ある劇場主催の落語縛りの企画に書き下ろしたものという。落語好きにも嬉しいディテイルが押さえられているだけでなく、ドラマトゥルギー的にも一々適ったりの筋立て。
    TVで大失態を演じ、弟子にも逃げられた失意の師匠のくだりが一景、以後パンカーのカップルや、謎めいた少女、訪問販売員となった元弟子が師匠の部屋を出入りするようになる。八景とも師匠の部屋が舞台だが、バラエティに富む各場面とも収まり良く、景ごとに丁寧にシーンが仕立てられているあたりも何処となく落語の小咄の尺と小さなオチを踏襲するかのようで好印象。でもって物語も円満なラストを迎える。
    冒頭の師匠の高座での喋り「地獄八景亡者戯」が振りとなっていて、珍妙な連中を弟子に入れて二つ目だ真打だと昇格させている一見元弟子の目にはヤケに映る師匠の振る舞いも、無念の内に実は死んでいた師匠の亡霊か、と。そうみれば納得もでき同情心も湧く。巧妙なのは師匠が既に亡き者なのか、今のは達観しきった姿なのか、確定できない曖昧さを残している点。
    仕事の合間に暇を見つけては縁側に座って中の様子をみている元弟子が、師匠の姿を通して落語への愛を見いだして(思い出して)いる事だけは確実で、師匠が幽霊であるか生者であるかはその事にとっては二次的な問題だ。
    ・・「面白ければいい」言葉には出さないが、型破りなキャラと喋りのパンク男とパンク女、掴み所のない少女を通して、師匠はそう言いたいのではないかと想像されて来るし、実際観客は彼らの喋りを面白いと感じる。もっと聴いていたいと思わせる喋りの魅力を放たせるのに成功している。(「ねえ、あれやって」と少女に乞われてパンク女が一くさりオープニングを語るのが「シド&ナンシー」で、彼女が最大のリスペクトを捧げてそれを語り尽くすだろう事が全身から伝わって来るので、さわりだけやってお茶を濁したようには全然見えない。)
    こんな落語があって悪い事はない、こんな落語家のなり方があっても構わない、落語の定義など誰が知っていようか・・そこに落語がある、そう思われればそれは落語だ。そして江戸の粋、これを説明する無粋を働きはしないが、武骨で馬鹿正直なパンクゆえにぶつかりあっているカップルは存在そのものが落語の登場人物をそのままにして体現しているし、「自分には何もない」事を一切恐れない存在である謎の少女も、相通ずるものがある。
    彼らとのハチャメチャな師弟生活を営む師匠を眺める元弟子の眼差しも(恐らく)変化して行く。2013年の5人芝居。

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    2018/09/04 23:43

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