満足度★★★
2012年東京・パルコ劇場での初演された三谷幸喜作の新作人形浄瑠璃は評判で再々演され、このたび博多座で上演されることになった。(ちなみに今回もA席は9500円、通常の古典文楽の公演は5000円~7000円だと思う)
公演に比べてチケット代が高いという評判も聞いていた。3000円のB席₍2階席)が取れたので観に行くことにする。
休憩なしの2時間公演。文楽の人形を操りながら作者の三谷の前説がある。東京出身の三谷だが、博多もふるさとだという。
義太夫節の中に「クライマックス」や「タイミング」「パトロール」というカタカナ言葉が入っても、さすがに我が朝の古典芸能!難なく自然に謡いこなすのはお見事。
噂の水中シーン(主人公夫婦が淀川に飛び込み心中をする)では、半兵衛は泳ぎが上手く、抜き手を切って女房のおかつを岸に助け上げてしまう。水中を泳ぎ回る文楽人形は初めて見たが、3人遣いなのでこんなことも可能なのだ。
文楽人形では表情は動かないけれど、細やかな動きが見どころ。やはりオペラクラスを持って来るのだったと悔やんだ。
古典の文楽に比べるとかなりスピーディに進展していたが、人形の動きと台詞と地の文を義太夫節で語るので、やはり人間の芝居よりはだいぶまだろっこしい。
義太夫節の心地よさに、ついついうとうとした瞬間もあり、シチュエーションコメディがお得意の三谷芝居では、聞き逃しは致命的だったかも。あらすじを知っている古典作品であれば、要所要所の見どころだけを味わうこともできたろうが。
終幕シーンの「情けは人の為ならずじゃなあ」という半兵衛の台詞は不思議とグッと心に沁みた。
昨今のボランティアばやりの中で、体力も健康にも自信がない私は指を咥えて忸怩たる思いをしていた。私にもできる人助けがきっとあるに違いないと気づかせてくれたせいかもしれない。昔から言われる「情けは人の為ならず」。よい心がけだと思う。
広島には大きなホールはあるが、演劇専用のいわゆる「劇場」はない。博多座の華やかさが私は大好きである。