満足度★★★★
初。数年前の『日本の劇』賞公演(新見南吉のお話)で純朴な女子学生姿で登場し、ラストをさらった白勢未生の名を見つけて観劇した。役名も白勢。白勢ありきの舞台だった(と私には見えた)。
本筋に当る「現代」の教師とある生徒との(教師の主観で描かれた)エピソードと、それに絡むおよそ2つのエピソードが順繰りに展開され時間経過を刻む。本筋エピソードでの、小中高と成長していく白勢と教師のやり取りの点描が印象的。「現代」とは、実は私達の現代(2010年代)のことで、芝居における「現代」は数十年?先の未来となっていて、その時代に発見された古い文書を元に2000年紀初頭のエピソードを復元した、という設定になっている。発想は面白いが、絡んで来るエピソードの位置づけが判りづらく、一組の男女のエピソード(未来の)が良い具合に煮詰まると、カットアウトで「・・という夢を見た」と話す女性とその聞き役の男との場面に移る。この二人がどの時代の話だったか思い出せないが(どの設定でもなかったかも知れない)ともかくこのエピソードがブリッジとしてはめ込まれているからか、深みの点ではどうにも浅く、厳しいものを感じた。
シーンによってハートウォーミングな展開が見られたり部分的に良さがあった。ただドラマとしては本筋に当たる教師と白勢の物語が、他のエピソードの挿入でお預けを食い、ようやく最後に十八歳になった白勢と教師の緊迫の対面を迎えると、やっと芝居らしくなる。この短いエピソードでは持たないから装飾を施してエピソードを増やしているような具合に見えるのも、リアリティに濃淡があるせいで、やはり「付け足し感」を拭う人物描写が欲しいというのは正直な感想。