満足度★★★
設問として掲げられた「嘘と本当」、こいつは演劇では一筋縄でない代物なわけで、この言葉を無前提に口にした時点で、発話者の嘘っぽさが滲む。というわけで「嘘と本当を見分ける」などという誘導には一切乗らず(乗れず)、それに代わる何らかの提起を待ったが、眠気に襲われない時間内にそれを発見する事ができず、終わってしまった。名乗られつつ姿を現さない名である(主宰の)早坂彩が、最後まで登場しない事により、結局真剣に観てもピースは埋まらないパズルを眺めさせられていた感。
うまく相手を喜ばせるための嘘になっておらなかったのでは・・と。「本当」を開陳したい衝動が「嘘」を支えている、あるいは本当を浮き彫りにするためにこそ嘘がある、というのが演劇における「本当と嘘」の関係であるなら、本来「嘘」だらけである演劇では「本当」にフォーカスするのが正しい探求の態度ではないか・・などと遊びのない理屈もつまらないものの一つではある。