満足度★★★★
1年強に1作ペースで打ち続けた劇団最新公演3作の一つ。どれも思い入れがあるが三部作中もう一度観るならこの作品だった。
この初演(2013)の一つ前、2012年吉祥寺での「楽園」再演(何かの賞を取ったらしい)は、私にはどこか限界感が感じられた公演だった。舞台総体はともかく俳優(個人)の背後にざわつきが見えてきて、この煮詰まりは「劇団を続ける意義」にまで及ぶ性質のものに感じたのだ。
劇団活動を着実に続け、やがて評価も高まったある時期に恐らく、劇団が揺さぶりにあう。劇団に帰属する事の恩恵と「出世」(映像に起用される等)の可能性とを天秤に掛ける瞬間、というのが一般的なのだろうが、さういふ状況を舞台から何とは無しに想像してしまった(俳優の周辺情報など一切知らず、単なる想像の先走りかも、だが)。少なからず食傷と幻滅に沈んだある時、webサイト上に劇団を刷新するPRが載っているのを見た。新人女優一名の入団、入場料一律3千円、劇団の原点に立ち返って先を見通し、探っていく・・イノセントな宣誓の文句が連ねられていた。
再生モダンスイマーズの第一弾が『死ンデ、イル。』である。「再出発」のきっかけが大なり小なり、東日本大震災の影響にある事は想像に難くなく、スズナリで上演されたこの芝居は被災地からの避難家族の話だった。
この時の舞台の出来は(少なくとも私の観た回は)あまり良いとは言えなかった。新団員の初々しくも拙い演技、スズナリという場所、震災にまつわる話である事、客演や古手の演技スタイル等々が、有機的に作用し切れず、「試み」の第一弾はギクシャクしたものだったと思う。が、新たな船出を期した記念碑的公演になった事は確かだ。(後の二作にも通ずる質的な何かを言い当てたいがうまく言えない)
今回の三部作連続上演は、新しい作品順のプログラムとなったが、再生の原点に照準が据えられた事に納得をする。個人的な話、この演目の番が回って来るとやはりこれは観て置かねばと急き立てられる思いになり、当日券に並んで後方の座席に座った。
シアターイーストに場所を変えた『死ンデ、イル。』はその事だけで一見小洒落た芝居に成り変わっているが、蓬莱戯曲の極小なドラマの手触りどこでやろうと変わらない。極小から視界を引いても細部の確かな遠景を見る事を約した舞台の水準は、入場料とのバランスで言えば笑ってしまう程だが、この劇団はやり抜いた。