草苅事件 公演情報 しむじゃっく「草苅事件」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    スタッフ欄でよく名を目にするしむじゃっくを初観劇。肋骨蜜柑フジタタイセイ作・演出、即ちしむじゃっくプロデュース公演。
    何やら賑やかでB級だけどそれが自由さで、面白味があった。狂躁曲に踊る「会見」の時間は演技態もリアルベースに非ず、冒頭とラストの「会見」前後の清掃員との肩の力を抜けた(ナチュラルな)会話にむしろ不得手感が滲む若者の舞台。
    フジタ氏の戯曲には一、二度まみえたが現代思想の言語を大胆に台詞に織り込んでしまう。今回はヴィトゲンシュタインの「語り得ないもの」の解釈がさらりと語られ、ドラマに接続するにはあまりに大上段で面映ゆい台詞なのだがなぜか収まりが良い。(この書き手の戯曲の収まり所を言い当てているかも知れない)
    記者会見場。とある文学賞の最優秀賞受賞作の作者が来席しておらず、代理人と称する女性が「受賞に値しないので辞退する」と告げにきた事に発して、紆余曲折の後のラスト、「その小説=物語は読んだ人の中で実を結んだに過ぎず、実際は白紙であった」という結論に向かう。ここに及んで脳内補完機能は発動、「観念として捉えれば面白い」モードで急場をしのぎつつ、「ドラマじたいは破綻」という結論を受忍すべく脳は体勢をとる。
    この極論を場内の人物らが受容する事はリアルにみれば「狂気」であり、実はその様を描きたかったのでは(その線は役者の力量を超え、演出もそこを狙ったと思えなかったが)、そんな解釈を促す「飛躍」は、思想領域が純粋に生きる抽象世界を舞台化したい欲求から来るものだろうか。
    役者が生き生き、楽しく演じている事が劇のアトモスフィアを醸成するという事があるが、この芝居での俳優のそれは「楽しく」もキワ物の部類、だがそれでもその効果はあるという事のようで、ともかく悪い気分でなかった。

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    2018/07/31 04:52

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