満足度★★★★
二本目「nursery」。小品におまけ付きのシリーズで、今回のは詩森、杉木による短い前日譚のリーディングとの事だったが、結構本域での芝居。もっともこれの評価は本編の出来次第。
問題の本編は昨年名取事務所がやった海外戯曲「エレファントソング」を思い出させる、精神科医と手強い患者の緊迫の台詞対決だったが、今作は二重人格を一つのあり方と了解した上でそれを手掛かりに「事実解明」に向かう。
上述の海外戯曲(映画化もされた秀作と比べるのも何だが。確か二重人格とも違った)では、新任医師の内面に鋭く斬り込んで翻弄する患者(青年)のズバ抜けた洞察力感知力との勝負の中で、患者である青年の精神性へと近づいていく。
今作は二重人格を必要とした青年の過去や精神性そのものより、二重人格の仕組みと事件(前任医師の死)との関係の解明が前面に出た印象だった。言葉による説明の比重が大きく、言葉の背後にある人物感情が見えづらかったのは演技の問題か脚本の問題か。
このエピソードの中に織り込まれた、新任医師の前任医師への「感情」が出来事を立体化し後半に情景を浮上させる鍵だったが、一方の青年個人の情景は、奇抜な表層からその奥には進めなかった感が残った。「犯されて可哀想」という憐憫(観る側にとってドラマティックさを掻き立てるフックとなる感情)にとどまったというあたりがそれ。
しかし俳優田島亮の活躍の場を作る事のために、難度の高い(そうな)二人芝居をそれなりのクオリティで三本も書く情熱、又は才能に注目な今回の公演である。