斜陽 公演情報 犬大丈夫「斜陽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     お見事!(華5つ☆)

    ネタバレBOX

     新宿眼科画廊をこういう具合に使った劇団を初めて観た。この小屋での公演は都合、20回以上観ているのだが、この使い方は新鮮。小屋出入り口部分は、スタッフがライティングや音響スペースとして用い奥半分程が劇空間だ。突き当りと左側壁に沿って天井から半分透けるような布が垂れ下がったり、天上に向けて一端を持ち上げられて緩やかなカーブを描いていたり、これらは、各登場人物の住まいや部屋を表しており、最もスタッフエリアに近い所は、小説家の家、ここには布に簾が2枚取り付けられており、床上には茣蓙が敷かれている。茣蓙の周りには、ウィスキーなどの瓶。その先は、母の部屋、季節の花の鉢植えなどがたくさん置いてある。その奥コーナー部分が直治の部屋で書物が山積みにされている。その隣客席側に直進した場所が姉の部屋、花やノートに小机が見える。
     開演前から終演までずっと木枯らしが吹きすさぶ音が流れ続けている、これは今作の描く直治の心に吹くdépaysementの嵐の音だろう。同時に小説家に恋し、彼の子を孕む姉の覚悟し、生き抜いてゆく世間の人情を表してもいよう。
     ところで、ピッタリ150分の作品の中で姉の話す科白は大変な量なのだが、如何に若いとはいえ、これだけの科白を1カ月ほどの練習で頭に入れているのには驚嘆した。基本的に皆滑舌も良く、しっかり原作を自分に身体化している。スタッフを含め今作に関わっている総ての人が、丁寧に作品を読み込み真正面から作劇していることが伝わってくる舞台である。今後にも期待したい。
     ところで、入り口で太宰を読んだことがあるか否かについてのアンケートが実施されているのだが、読んだことの無い人が2.5倍以上居たのには驚くと同時に大きなショックを受けた。若い人達の読書離れがこれほどとは!

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    2018/07/22 01:59

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