デペイズモン 公演情報 Toshizoプロデュース「デペイズモン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     開演前、ずっとジャニスの熱唱が聞こえてくる。

    ネタバレBOX

    オープニングでは、ボリュームを上げたジャニスの歌声が響く中、劇場舞台よりひと回り小さい平台のセンターに座った男が身の上話を話しかける、ジャニスのラストアルバム、Pearlでは、彼女が歌い終わった後、哄笑するシーンが入ったもの(Mercedes Benz)があるが、あの笑いは、狂気に溶け込んでゆく彼女の姿そのものであったろう。開演時はTrust Meが掛かっていた。彼女の死に様、一所懸命に愛を求めた生き様を思い出す時、そう考えさせるほど、曲が作品にマッチしていた。途中、1度だけ掛かるサティーも当時異端扱いされパリの場末の酒場でピアノを弾いていたサティーの乾いた孤独とアンニュイそして絶望の淵にある自己嘲弄をも表していたのではないか? これも掛かった瞬間、背筋に震えが走った。思えばジャニスもサティーも辛い人生であったろう。
     タイトルはdépaysementから採っているようだ。この言葉は、フランス語で気分転換などの意にも用いられるが、原義としては難民などになって異なった環境・習慣などの中に身を置いた際に否応なく体験する居心地の悪さ、違和感、戸惑いなどを意味する言葉である。今作で描かれている内容を思えば、原義に近いタイトリングと解釈して良かろう。英語にもdepayseには“なじまない”、“居心地が悪い”などの意味がある。劇団サイドの説明ではウィキの説明が用いられているようだが、内容にはそぐわない。
     照明と音楽の用い方が見事である。多重人格性障害(解離性同一性障害)を患った妹を中心とした物語だが、自殺を図った妹の面倒は兄が見、精神科に入院させている。兄妹の実家は祖父から続く医者の家で九州の地元では名家と考えてよい。但し父は酒乱で酔えば母に暴力を揮っていた。兄も酒乱である。そのDVが原因で妻・娘の逃亡先すら知らない。物語の内容は、以上の情報から推理して欲しい。総じて演出の優れた舞台と言えよう。

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    2018/07/21 13:29

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  • まりふじさんへ
     ご丁寧なメール有難うございます。
    喜んで頂けて幸いです。それにしても
    人の心というものは、深いものですね。
    ボードレールではありませんが、その底迄
    ゾンデを下ろした者は、未だ1人もいないのが
    ホントに良く実感できます。シンギュラリティー
    がやって来ても、人間が生き残れる道が、こういう
    ジャンルなのでしょうね。遊びとか。
                    ハンダラ 拝

    2018/07/22 00:56

    ハンダラさま、観てきたコメントありがとうございます。「dépaysement」の意義を改めて知り、ますます本作のタイトルが好きになりました。
    照明、音楽、役者、脚本、演出…たくさんの要素が合わさり、ひとつの作品が出来ていく、しかも毎回同じではない、そしてそこに観客の皆さまがいて初めて完成されるというところが舞台の魅力だと思います。そうして上演された舞台にこうして感想をいただくことは、とても嬉しいです。ありがとうございました!

    2018/07/21 17:00

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