満足度★★★
劇団壱劇屋は、舞台芸術口コミサイトのこりっちの年間の「舞台芸術ベストテン」で2016年と2017年に1位を獲得した人気劇団、野次馬根性で観に行ってみた。関西が本拠地の劇団だが、東京には毎年公演に来ていて今年は5年目とのこと。
作・演出・殺陣が竹村晋太朗の『独鬼』は、主演も竹村だ。
台詞は無く、眩い照明と大音響の中で、初めから終わりまで激しい殺陣の応酬が続くという新感線も真っ青な派手派手芝居であった。
ずっと一人で生きて来た殺されても死なない鬼、彼は普通に生きることに憧れている。ふとしたことで託された赤ん坊の女の子と生きることになった50年の間に彼は何を思ったのだろうか。虐げられたものを守ろうと身を挺する女を救うため、鬼は止めどない争いの中に身をおくことになるのだが。
前売り券で最前列の席だった私は、派手な立ち回りで舞台を駆け抜ける役者の起こす風を身体で感じる。最初は台詞の無い中で何とか意味を探そうとしたが、人が殺し合う立ち回りのカッコよさについ見とれてしまった。残虐さや残酷な印象はなく、ハラハラどきどきの連続だった。
最終場面で鬼がもたれていた大木に、女と一緒に育ち後に鬼を狙う男が、女の簪で何かを彫りつけている。鬼の姿を彫って、最後に鬼は死ぬのかなと想像したが、彫りあがったのは、合掌する女の姿だった。
老いて女が死んでしまった後も鬼は生き続ける。派手なチャンバラ劇ではなく、なんか深いものを感じさせる。
アフタートークのゲストは、下北沢の本多劇場グループの本多愼一郎さん。台詞がなくても分かるので、海外公演もいけるかも等と言われていた。鬼役の竹村晋太郎が喋るとコテコテの大阪弁である。いつか下北沢の全劇場制覇を目指したいとのこと。
壱劇屋は2008年に活動開始なので、劇団創設10年である。その意気軒昂なところが何とも羨ましい。