ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル 公演情報 パルコ・プロデュース「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    現代アメリカの典型的ローカル劇だ。数年前にピューリッツア賞と言うから、アメリカでは受けたのだろう。家族から離れて一人で隣人に善意を分かち合いながら生きてきた女(篠井英介)とその家族たち、と、この女が加わっているコカイン中毒から抜け出す患者のチャットグループ、と現代的な病理を抱え込んだ一つの家族と、一組のネット上のグループ、が劇中で交錯する、というイマ風のドラマだ。話の筋は、この女の姉が死んだことからくる家族のゆらぎだが、それはあまり重要ではない。現代的な社会構造の中での生きづらさが、麻薬依存を生み、個人の孤独を増幅する有様を、徹底的に孤独な登場人物たちを登場させて描いていく。中には、日本からアメリカへもらわれていった孤児などもネットグループの一員として登場する。ひょっとすると彼女が出ているためにこの作品の日本上演を決めたのか、とも勘繰りたくなるほど、ドラマの内容は現代日本からは遠い。やがてこうなるという先進国の先取りドラマは随分見てきたけど、これはどうだろう。国情、人情が違いすぎる。ここまで行くにはまだ一世代はかかるだろう。
    俳優たちは役は把握していて破綻はないが、どこまで行っても日本人で、女優陣になるともうNHKドラマである。ドラマの基本に現代アメリカの生活(たとえば飛行機で行き来する広さ)があるのだから、台本が与える感情は出せても索漠とした生活感は出せない。それは日本でやるのだから仕方がない。この作品はやはり、アメリカならではのところがあり、うかがい知る殺伐としたあの国の風景と、その裏側にある篠井が演じるような超越的とでもいうしかない人間性の発露(これも日本にはないものだ)があってこそ成立する「スプーン一杯の水を少しづつ根気よく与える」ことでしか生きていけないかの国の物語なのである。
    久しぶりにG2の演出を見た。相変わらず人物の出し入れや見どころの作り方は旨い。大きな舞台もこれから続くようだが、二十年前颯爽と関西から出てきた才能の新しい展開を期待している。また楽しみに見てみよう。

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    2018/07/10 00:10

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