満足度★★★★
久しぶりに見た完成度の高い抽象演劇である。紅白の紐に囲まれた広い空間に和船が回転するサーチライトの中に見える。船の下には何やら人間が。開演すると、その人々(7人)が出てきて、「地点語」でテキストを発語する。囲まれた空間は現代日本、人々は日本人、船は日本が担いでいる物、とでも解釈しておけばいいのだろう。ときどき人物がまわりの海にポチャンと落ちたり、観客から手を挙げた11人(サッカーに絡めたギャグだ)に舟を担がせたり飽きさせない。物語には紹介にあるようにいくつかのシチュエーションがあるようだが、一つ一つは解らなく(細かい筋が理解できなくても)ても大丈夫。見るこちらも地点語にも、このスタイルにもだいぶ慣れて、こういうスタイルの演劇も楽しめる余裕が出来た。俳優がすべてすり足で主に横に動いていく動き(案部聡子はやはりうまい。手を挙げたりするとハッとするような美しい形になる)とか、リズミカルな発語の構成とか、結構完成度が高く見ていて気持ちがいい。昔の利賀村の鈴木忠志のようだが、鈴木が絶対君主制と白石加代子で築いた舞台よりも、こちらは現代的で、俳優の質もあってのびのびやっていて、内容は現代日本へのかなり厳しい批判なのだが、明るい。そこにも抽象演劇の時代の変遷を感じた。選曲・音響効果もうまい。90分。
余計なことだが、京都の劇団はどうして東京でやらないのか。地点もかつては池袋の奥の劇場で何度もやっている。KAATは設備もよく、厚遇されているのだろうが、東京の客には横浜は遠い。カーテンコールで三浦基に京都まで来いなどと言われると、そんなに粋がらなくてもいいじゃないか、言う相手を間違えているのでは、と思ってしまう。こういうところまで鈴木をまねる必要はないだろう。、