満足度★★★★★
上演時間いつもきっちりと90分。これ、映画もそうですが、人間の見られる時間の基本タイムです。そしていつも人間の、人と人の機微を忘れ去られた時を遡るかのようにじっくり見せてくれる空晴ワールド。いつもいつも感心して見てしまいます。
今回はいつもの勘違いからくる挿話が淡く、いつもほど強調していない。さらりと描いて、爆笑には持っていかない工夫がされていると思った。前作を経て、山を越えたのか、ちょっと方向を変えた感がする。
それが真実だったら、それは正解だと思う。いつまでもいつもの空晴でいる必要はなく、空晴一同も観客もそれぞれ時間とともに変わっていくのだから、、。
3軒の隣近所の話だが、この小さな町に20数年ぶりに帰って来るもの(上瀧昇一郎)、夜逃げ同然出ていくもの(孫高宏・駒野侃),娘はいるもののなかなか会えない元教師(山本ふじこ)、そして訳あり中年新婚者2人(絶妙岡部尚子・小池裕之)の家族を通して、自分と隣という他人との関係を庭という親近感のあるものを通して考えてゆく、、。
ひょっとしてそこに仕切りは要るのか要らないのか。
岡部の脚本は最近特にじっくり描いた女流小説風である。きめ細かく、劇を見ている時より、終わってからその余韻を辿っていくと、空白の間というものを考えさせてくれる稀有な作家である。そう、文学的なのである。
相変わらず今回も素晴らしいと思う。彼女はどこまで進歩してゆくのか、、。