幕末疾風伝MIBURO~壬生狼~ 公演情報 TAFプロデュース「幕末疾風伝MIBURO~壬生狼~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「生きる」とはを考えさせる時代劇。時代に翻弄されながらも誠実に生きようとする新選組隊士、一方平和な時代に生きることの意義を見出せない若者。エモーショナルな激しさ、ユーモアとドライな視点で観客の心を揺さぶる。
    しっかり伝えようとする歴史フィクションは観応えがあった。
    (上演時間2時間30分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台は殺陣・剣舞・アクションスペースを確保するため、作りはシンプル。それでも骨組みだけの櫓を左右対称に設置し、その間に半円形の障子窓(和風)がある。

    梗概…現代、明治期に絶滅したと言われているニホンオオカミを探すため、イヌ岳に入山し遭難した兄・妹。妹は一週間後に救助されたが、その間に経験した出来事を日記に残し、それを基(治療用)に回想する。兄・妹が再会したのは幕末の京都。兄は新撰組の八番隊長になっていた。妹は弟と性別を偽り入隊し、新撰組の盛衰(約4年、池田屋事件→分裂騒動)を目の当たりに見る。現代と回想・幕末期の時間の流れの早さが異なる。浦島伝説のように物理学で言うところのウラシマ効果で観せる。

    明治維新から今年で150年。時代に翻弄されながらも、生きる価値を模索し続けた漢(おとこ)達をマジックリアリズムの手法で描く。タイト「MIBURO」は、新撰組の屯所があった場所。その暗殺集団と恐れられた新撰組を狼-ニホンオオカミに準えている。現代、「生きていく意味」に向き合うことを見失っている。本公演は新撰組の生き様を通じて、生きることへの価値・意義のようなものを、娘の体験を通して伝える。

    物語は文献史ではなく記憶史として、個人の視点から描いている。真のサムライを夢みた隊士=その大志という大きな国家感と、二幕目に出現させる遊郭、花魁との遊興は人間臭さを感じさせる。その鳥のような俯瞰=社会観と虫のような地べた=庶民感の対比する見せ方も面白い。返り血をあび業火に焼かれても、赤い夕焼けを見ると明日は良い天気、希望が持てるような気持になる。その気概のようなものを持ち、生きることの喜びが伝わる内容である。

    最後に、殺陣と剣舞を分けて観せる。またその演出として刀が交わる音響、幾何文様の照明など舞台技術も印象的であった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/06/10 12:30

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