満足度★★
<なんでもない、特別な1日>をキーワードに、生まれてしまったこと=原罪をめぐり葛藤する少年少女たちの物語。
舞台上にはDJブース。上演中は、主宰の僻みひなた自らがプレイする大音響のトランスがほぼ休みなく流れ、セリフはハンドマイクを通して語られます。
その断片的でエモーショナルな独白を拾いつつ、観客は自ら物語を構築していくことになります。
東日本大震災<3.11>という現実と、丘の上の家に軟禁状態で暮らす姉妹という架空の物語とが二重構造になっているところが一つの趣向。舞台中央に座り続ける、まだ生まれていない、拒絶された命(少年)の存在とも相まって、なんのために生まれたのか、なぜ生まれるのかという問いがここでは繰り返されます。
かたや陰惨な死、かたや無垢な生の輝きと、一見世界観は異なりますが、エモーショナルな台詞の反復、生/死を扱うテーマ(そして白い服を着た少女)は、マームとジプシーなどにも通ずるところがあると思いました。個人的にはむしろ、そういったものへのカウンターも期待したのですが……。「生」の脆弱性(やそれゆえの輝き)は、普遍的なテーマではありますが、そこだけに留まらない視点の提示が欲しいところです。
音楽はもちろん、発話のスタイルや演技も、独自の世界観、ビジョンの実現に向けて、しっかり積み上げた感がありました。
観客をうまく巻き込む力、工夫も感じます。ただ、それだけに、もう一回り外からの視線、閉じた世界に耽溺しない社会への通行路をもつくってもらいたかったという気がします。